カジノロワイヤルの手帖

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「失踪日記」吾妻ひでお

失踪日記最近やたら評判のこの本、でこぽんさんから借りて読んでみました。ちなみにわたくし吾妻ひでおの作品はほとんど読んだ事がありません。
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この本の凄いところはいろいろありますが、一番凄いと思うのは情緒的にウエットな部分が全くないところ。そういう人生を歩むハメになった自分に対する言い訳とか自己憐憫とかカッコつけとか、そういう気取った要素が全くない。こういう創作物としては中島らもの「今夜、すべてのバーで」を思い出しますが、こちらがアル中に陥った自己の弱さを内面から鬱々とこねまわすのに対し、「失踪日記」のほうはむしろアル中に陥った自分を虫メガネで観察してネタにしているような感じで真反対です。平凡な体験記ならおそらく「こんなにダメな自分」に対する何かしらのエクスキューズが入りそうなものですが、それを全く排してここまで明るく悲惨に描けるのは凄いなあ。表現者として性根が座っているというか、業を背負っているというか…。
笑えるかどうか、というと微妙なところで、わたくしは笑いながら読むというよりは興味津々で読んでしまいましたね。よく仕事がテンパった時など「ここでオイラ逃げちゃったらどうなんのかな…」と会社に向かう道すがら妄想しちゃったりするんですが、それをリアルでやっちゃったのがこの本なわけでなんとなく他人事ではない感じ。なので笑い飛ばすよりは「ううむ…そうなのか…」と手に汗握るわけであります。