カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

大横溝正史まつり

えー同居人改めカミさんが以前実家から持ち帰ってきた角川文庫の横溝正史が本棚で大量にうなっていたので何気に読み始めたらまあ止まらないこと夥しい。ここ何ヶ月かで一気に読んでしまったのでここに謹んでタイトル列挙。ちなみに「本陣」「犬神家」「手鞠唄」「獄門島」「八つ墓」「病院坂」あたりの有名どころはだいぶ前に読んでます。
読んだ作品:「迷路荘の惨劇」「スペードの女王」「白と黒」「迷路の花嫁」「真珠郎」「花園の悪魔」「幽霊座」「悪魔の降誕祭」「七つの仮面」「悪魔の寵児」「悪魔の百唇譜」「蝶々殺人事件」…。
面白かったのは「蝶々」「スペードの女王」「白と黒」「迷路の花嫁」「真珠郎」あたりですかね。「蝶々」は途中で犯人もトリックも判りましたが、作者の周到さとサービス精神はそれを補って余りあるものが。「真珠郎」も怪奇幻想談ミーツ探偵小説という感じで作者のやる気がみなぎってて印象深い。「白と黒」「スペードの女王」「迷路の花嫁」はストーリーテラーとして作者の力量が十分に発揮されています。
逆に「ええー…」と思ったのは「悪魔の百唇譜」「七つの仮面」。どっちも東京が舞台の金田一ものですが、「七つの仮面」の方は自分にはめずらしく読むのを途中でやめてしまいましたよ。
あまり知られていませんが、金田一耕助ものには岡山の山村を舞台にした土俗的な作品の他に、盛り場としての東京を舞台にしたモダンな作品も多いんですね。今回読んだのもこういう作品が中心でしたが、やはり岡山を舞台にした代表作群よりも何となく印象が薄い、というか多少の違和感があるのは否めない。とはいえ、逆に東京ものではあるけれども、もっさりした金田一ではなく、由利先生なるスマートな探偵が活躍する「蝶々」「真珠郎」はむしろ傑作の印象が強かったりして…。舞台と主役のカラーが一致しているときに傑作が生まれている、というのはちょっと興味深いものがあります。