カジノロワイヤルの手帖

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「ドルリー・レーン四部作」エラリイ・クイーン

Xの悲劇 (創元推理文庫)
子供の頃に読んだ事がありましたが、ふと思い立って4冊全部通読。新潮文庫大久保康雄氏の訳(正確さがどうなのかは判らないけど、日本語としてこなれていて、読みやすい)で全部読みたかったのですが、新潮は何故か「最後の事件」が出ておらず、「Z」も入手できなかったので、「Z」「最後の事件」はハヤカワ文庫にて。こちらの訳は宇野利泰氏ですが、翻訳ぽさが強くて文章が硬いところがちと残念(ただ読みやすい方だとは思います)。

犯人の意外性と、最終章解決編の切れ味が凄まじい「Xの悲劇」。これに加えて陰惨で禍々しい雰囲気が全編を包む「Yの悲劇」。この二つの歴史的傑作に隠れて影が薄いですが、解決編の消去法による犯人特定が印象深い「Zの悲劇」。そして読後にこの四部作で作者がやりたかった仕掛けが判明して「マジすか?」と愕然必至の問題作「レーン最後の事件」。「X」「Y」は単体の推理小説としても神がかった面白さですし、四部作全体としては、あるワンアイディアを実行するためだけに作者が変名を使って発表したという、その周到さが作品にも作品を巡るエピソードにも表れていて非常に面白い。ですのでここはやは「X」から順番に読んで頂きたいところですね。

なお読まれる際は、巻末の解説は四部作読破まで全部スルーしておくのが賢明かと。けっこうキワドいこと書いてますから。