カジノロワイヤルの手帖

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「封印作品の謎2」安藤健二

封印作品の謎 2
おお、続編が出たか、と買って何気なく読み始めたら、引き込まれて最後までイッキ読み。前作以上に息詰まる力作ルポルタージュでした。 「キャンディ・キャンディ」「ジャングル黒べえ」「オバケのQ太郎」「サンダーマスク」といった作品が、現在なぜ封印状態におかれているのかを追跡調査。浮かび上がったのは作品の内容とはほとんど関係のない、著作権者たちが抱えた様々なトラブルであった…というわけで、健全きわまりない作品の周辺に、人の思惑が絡みあったどす黒い闇が出来ている、という構造がどのケースにも生じているというのがやりきれません。これだけの深い闇にいくつも行き当たって、著者はなんかもうアメリカに逃亡する前の金田一耕助のように無常感にとらわれてたりしてんじゃないだろうか。心配です。

作品が封印される事により、その作品の中身や、封印をめぐる顛末は数限りない伝聞を経て都市伝説化してゆきます。例えば「サンダーマスク」の封印の理由が「エピソードに原発を扱ったものがあるから」などという説はその最たるものですが、そういった一人歩きしている都市伝説の実体を明らかにすることにより、謂われなき非難と糾弾から作品そのものを救っているような気さえしてきました。

しかし…オバQまで封印状態にあるとはのう…。封印の真相にあと一歩まで迫ったものの、手がかりの尽きた著者が、ダメもとで藤子不二夫(A)のサイン会に突撃してゆくくだりはあらゆる意味でスリリングです。