カジノロワイヤルの手帖

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巨人と玩具

巨人と玩具 [DVD]
開高健の同名小説の映画化版。監督は増村保造。高度経済成長期の日本のサラリーマンがどのくらいモーレツだったかを極限まで戯画化。製菓会社の宣伝合戦を題材に、経済成長という怪物と、それにすり潰される人間、うまく利用してのしあがる人間を描きますが、はっきり言ってクレイジーです。イカれてます。なにせ登場人物に善人がひとりも出てきません。みな多かれ少なかれマキャベリストであり、しかも全員猛烈な早口で喋る、喋る、喋る、喋る、喋る。まるで会話の間を奪い合うように喋りたおす。この映画では早口かつデカイ声で喋れない人間はたとえ正論を言っていたとしてもたちどころに潰され駆逐されてゆきます。いやあ真理だ。真理ですがここまで徹底してやるともはやクレイジーの領域です。

制作年代は1958年。昭和で言うと三十三年。この時代にすでにこういう経済成長の歪みをここまでえげつなく描いた小説や映画があったのだと、そのこと自体が驚きです。最近は何度目かのレトロブームで昭和三十年代が失われた楽園のように取り上げられてますが、そんなのはタダのノスタルジーであって実は当時から日本はこんなんだったのだよ、50年たった今もそんなに変わらないじゃない、ということをこの映画は突きつけてきます。

原作では派手な宣伝合戦の果てに製菓会社は軒並み倒産し、社員たちも虚脱し切って空しい戦いは終わった感を漂わせて終わりますが、映画のほうは皆ズタズタになりながらも戦いはまだまだ続くのですよ感たっぷりで終わり、それは今日に至るまで続いている、という雰囲気を匂わせているのが鋭い。当時この映画はコケたそうですが、こうした批判性も当時のモーレツ日本経済にあっては観客に見向きもされなかった、ということで、そのこと自体もまた一つの皮肉といえます。