カジノロワイヤルの手帖

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「不味い!」小泉武夫

不味い! (新潮文庫)
さいきん読書づいていますが、まあ風邪みたいなもんだと思ってください。この人の食に関するエッセイは好きで時々読んでいますが、テーマが「不味いもの」だけあってゲテモノ映画を好むオイラとしてはなにかこう言いがたいシンパシーがわいてきます。観光地のお膳から病院食、学校給食、あるいは蛇や虫やカラス、シュール・ストレミングまで、まさに血涙でも流すかのような熱意で不味いもの体験をとくとくと書き連ねる著者。「人、谷の低きをもって山の高さを知る」というのはオイラが長年のクズ映画鑑賞で悟った真理ですが、この本も同じ理屈でうまいものの裏返しとしての不味いものを収集し、結果として逆説的に「うまいものとは何か」を語る本になっています。
ところでこの人の文章には照れの無い陽性のユーモアが溢れててオイラなかなか好きです。こういうおっちゃんが身近にひとりいるとさぞ楽しかろう。