カジノロワイヤルの手帖

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「パンク侍、斬られて候」町田康

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)
本人はそう呼ばれるのは不本意らしいですが、客観的にはどう見てもテレビ時代劇の大マニアである町田康の長編時代小説。…と、表紙だけみればそんな感じですが、中身は大変なことになっていました。全体的にテレビ時代劇、時代小説の壮大なパロディをやって読み手をゲラゲラ笑わせつつ、人間心理についてかゆいところに手が届くような洞察もみせ、後半はチャンバラあり、スプラッタあり、打ちこわしあり、いくさもありの大サービスでエンターテイメント性もバッチリ。という感じで後半は一気に読んじゃってたいそう面白かったのですが、この面白さを表現するのが実に難しいのです。まあ登場人物の役人侍が困った事態に陥ってストレスのあまり「ザ・ハーダー・ゼイ・カム」を狂ったように歌っているところへ、主人公の浪人が氷川きよしの物真似で合いの手を入れる、というようなディティールから大体の雰囲気を想像していただければと思います。
一口にいえば、時代小説のパロディ&笑える純文学。この純文学でありながら笑える、というところがポイント。芥川賞を受賞した「きれぎれ」も、初めと終わりは純文学らしい雰囲気で進みますが、途中はゲラゲラ笑ってしまいました。芥川賞受賞作読んでゲラゲラという経験は今のところこれ一作だけであります。