カジノロワイヤルの手帖

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グッドフェローズ

グッドフェローズ [DVD]
監督:マーティン・スコセッシ。主演:レイ・リオッタのマフィア盛衰記。実話。マジかよ。レイ・リオッタと言えば『ハンニバル』を観たときに、この人はもう一生「ああ、『ハンニバル』の○○活け造りの人」と言われ続けるのか。むごいことよのう。と思ってしまうほどのインパクトだったので、その後どの出演作を観てもあの晩餐シーンが脳裏にちらつくという鬱陶しい事態になっていたのですが、この映画でそれは改まりましたね。ホントすまなんだリオッタ。


お話はマフィアへの憧れが高じて小学生の身で組の舎弟となったレイ・リオッタが、出所の知れない金でブイブイゆわしているロバート・デ・ニーロと、突然キレて笑顔で拳銃をぶっ放すガイキチ風味のジョー・ペシと組んでのし上がってゆく、というおマフィア三人繁盛記。しかしこの役の組み合わせにはなんか既視感が…と思ったら『カジノ』じゃねーか。監督も同じだし、ジョー・ペシに至っては性格が全く同じキャラだし、時のヒットソングを場面に合わせてDJのように繋げてゆく演出も同じだしで、そうか『カジノ』は『グッドフェローズ』ふたたび、みたいな存在の映画だったのか、と納得納得。


話も語り口も十分面白いのですが、ジョー・ペシ不条理道を極めたキレ方とか、イタリアン・マフィアの独特の掟とか、義理人情の厚さと裏切り者への冷酷さのギャップとか、その辺のディティールも面白くて引き込まれます。一度は逮捕されてムショにぶち込まれた一家ですが、獄中でもわりとのんびり家庭料理を作ってワイン飲んでたりとかするのがオカシイ。で、ムショから出てきたレイ・リオッタはまた昔のようにブイブイいわせようと一家の掟に反してコカインに手をつけます。で、売るのもキメるのも両方派手にやるもんですから話が進むにつれてFBIが嗅ぎ付けてくるわクスリでテンパって妄想が出るわ、そんな状況で朝からあっちに行って銃を受け取りこっちにいって粉を買いつけ、合間に自宅で食事をつくってその後愛人のところにシケこんで、また家に帰って食事をつくって、その間中「FBIのヘリがオレを尾行してる」としきりに空を見上げてピリピリし、最後に取引先に向かうべく大慌てで家を出ようとした途端に「逮捕する!」の声と突きつけられる拳銃。


この「忙しい一日」のエピソードがなんだか一番面白かったですね。テンパった顔で右往左往、いくつものヤマをイソイソこなしながら、マメに料理までやっているあたりがまずオカシイ。そしてその語り口もキビキビ、セカセカとせわしなく、観てるこちらも忙しメーターがじんわり上昇。高まるイライラ感。それがギリギリ極まったあたりを狙って全てを脱力させる「逮捕する!」の一声。いやあこのくだりは傑作ブラックコメディを観ているようでしたよ。


映画はそこを境に一気に辛気くさくなり、最後はまことに仁義なき世界となってレイ・リオッタには皮肉な結末が待っているのでした。以上。いやあ面白かった。今まで観ていなくてレイ・リオッタにはホントに申し訳無かった。これ観ていなかったらオイラの中ではこの人は永遠に活け造りの人でした。以後オイラにとってレイ・リオッタコカインキメて妄想に追われながらイタリア料理を作る人、および活け造りにされる人に決定。いややっぱり活け造りは残っちゃうんですが。