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カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

サンダーマスク

サンダーマスク (サンデー・コミックス)
先日、懇意にしている某古書店にて、閉店後に「店呑み」をやったんですが、そこで話題になったのが「サンダーマスク」。(画像は手塚治虫によるコミカライズ版)
「ああああ、ありましたねえそんなの」
「原子怪獣ゲンシロン!」
「サブタイが『死の灰でくたばれ!』ですね。危ねえなあ」
「『サンダーマスク発狂』っていう回もありますね」
「敵の名前がシンナーマンで」
「めちゃくちゃ観たいですね、それ」
と、その時初対面だった三十路の男3人が意気投合してしまったので趣味の一致というのは素晴らしい。ハラショー。ブラボー。


封印作品の謎 2
で、後日のその中の一人にまた会ったんですが、その時に渡してくれたのが「サンダーマスク」とラベルに書かれた一本のビデオテープ!おお!まさか本当に観られるとは思わなんだ。昨今の特撮DVDバブルでどんなZ級作品もボックスが次々リリースされる中、ある程度の知名度がありながら、なぜかDVDはおろかLDやVHSも含めて一切ソフト化されていないのがこの作品で、文字通り幻の作品。なぜ幻なのかは安藤健二著「封印作品の謎2」に詳しいのでここでは割愛しますが、要するに権利関係のトラブルが元で塩漬けになっているらしいのですね。


で、肝心のご本尊を有り難く拝見いたしました。収録されていたのは第1話「見よ!暁の二段変身」、第19話「サンダーマスク発狂」、26話(最終回)「さらば勇者 輝く星よ」の3本。どうやら新潟県で80年代に再放送されていたものの録画のようで、合間合間に挟まっている地方CMが味わい深い。ついCM飛ばさずに見ちゃいましたよ。画質はこの手のビデオにありがちな裏ビデオ級なので妙に雰囲気が高まります。


第1話「見よ!暁の二段変身」はなんと監督が本多猪四郎。マジか。サンダーマスクは魔王デカンダの侵略から地球を守るためにサンダー星から派遣された正義の味方ですが、うっかり一万年早く地球についてしまい、しょうがないのでコールドスリープで一万年の眠りについたのでした。そして一万年後、デカンダの地球侵略を察した3人の科学者はサンダーマスクを目覚めさせるべく必死の発掘作業を続けます。デカンダの妨害に遭い次々と殺される科学者!まことに世話が焼けるヒーローで、寝る時は目覚ましぐらいかけときなさいよと小言の一つも言いたくなります。これ、運良く人間が探し当てたからいいようなものの、見つからなかった場合は一万年くらい平気で寝過ごすんじゃないのか。まあそのような次第で叩き起こされたサンダーマスクは寝起きにも関わらずハッスル。サンダー二段変身をかましますが、二段変身といっても等身大の姿のまま巨大化するだけなので、わざわざサブタイで「見よ!」とアピールするほどでもありません。


問題の第19話「サンダーマスク発狂」。実にパンチの効いたサブタイです。この回だけ画質が異常に悪く、マニアの手から手へダビングが繰り返されてきたことを物語りますが、なんとか見られるレベル。この回、デカンダは婦人警官に化け、道ばたでラリっているシンナー中毒の患者を検挙するフリをしては誘拐し、怪獣・シンナーマンのエサにします。ラリリの若者の頭に穴をあけて脳味噌をすするシンナーマン!さらにデカンダこと婦人警官(なんか妙にSっ気が漂う)は脳科学研究所を占拠。サンダーマスクの人間体(名前・命光一)を拉致してシンナーマンと脳味噌を入れ替えます。路上を狂い回り、若い女性に襲いかかる命光一!という現代の放送コードに慣らされている我々にとってはたいそう刺激の強いシーンが連発です。


第26話は最終回ですが、前回のあらすじから始まります。魔王デカンダは上司である大魔王ベムキングから仕事の進まなさにより叱責を受け、鉄人13号という昭和40年代当時でもそれはどうかと思うネーミングのロボットを送りこんでサンダーマスクを窮地に叩き込みます。そこで科学パトロール隊は新開発の超強力ミサイルでサンダーマスクを援護しようとしますが、狙いが狂ってミサイルはサンダーマスクに命中。サンダーマスクは命光一の姿に戻りますが、ミサイルの威力で二度と変身できない身体になったうえに失明してしまいます。この科学パトロール隊のスカタンっぷりは筆舌に尽くしがたく、衣装のデザインも普通のヘルメットを銀色に塗っただけというヤル気の無さ。挙げ句の果てに「サンダーマスクここに眠る」という墓まで作るなど無駄なところで仕事が早いので全く応援する気が起きません。さて命光一はサンダーマスクに変身できなくなってしまいましたが、そこで困ったのが魔王デカンダ。なぜなら彼は上司からサンダーマスクの首級をもってこいと厳命されており、タダの人間の首を持って行ったのではより厳しい叱責が待っているのは火を見るより明らか。ですのでデカンダは命光一に「変身しろ!」と詰め寄りますが、無理なものは無理。「う〜む、困った!」と頭を抱える魔王デカンダ。中間管理職の厳しさです。最終的に命光一はサンダー星からやってきた妹の力を借りて変身に成功。デカンダを道連れに自爆して果てます。残された人々(科学パトロール隊含む)は「サンダーマスクは星になったのよ」ということにしておいて一応感動的に幕を閉じますが、なんとなく漂う誠意の無さは隠せません。


全体的にいかんともしがたいB級感がみなぎっており、こんにちの目でみるとヤバかったりヘンだったりするところも目につくんですが、別にお蔵入りになるほどひどいもんでもなし、むしろ懐かしく思う人もいるでしょうから、権利関係をクリアしてぜひソフト化して欲しいものです。が、権利関係の事情を読むかぎり状況は絶望的でして、こうして裏ビデオみたいな扱いでしか世に流通できない正義のヒーローというのは実に不憫というしかありません。なんとかならんもんスかねえ…。