カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

ローグ・アサシン

監督:フィリップ・G・アトウェル、主演:ジェット・リー。このジェット・リーが伝説の殺し屋「ローグ」として暗躍し、対立するチャイニーズ・マフィアとジャパニーズ・ヤクザを殺し合わせるという何だ『用心棒』じゃねえか映画の新作。プロットは『用心棒』を遠い手本にしつつもヒネリが効いてて最後は「おお、そうだったのか」てな具合にポンと膝を打ちますが、細かい辻褄をつつくと実は穴だらけのボロボロなのでシロアリ住宅のごとしです。最大の問題は、デヴォン青木の日本語がやたら力み返った調子で吹き替えられていることでもなければガッカリ級に少ないケイン・コスギの出番でもなく、ジャパニーズ・ヤクザ街(というのがあるんですか?向こうには)のケバケバしいディスコの奥でやはり声優並みの滑舌の良さで日本語を喋るヤクザがVIPルームの真ん中にタタミを敷いてサイコロ賭博に興じている点でもなく、あまつさえ寿司屋の壁や入り口に「弱肉強食」「馬鹿な奴ほど役に立つ」などのキテレツな貼り紙がしてあったりということでも当然なく、また呆れるのを通り越して戦慄を呼ぶFBIやマフィアやヤクザの何も考えてない感じであるハズもなく、えーと、つまり、なんだっけ。そうだ、この映画別にジェット・リーが主演じゃなくても全然いいじゃん、という事。だってアクション少ないし、たまにあるかと思ったら遠くからライフルで狙撃したりピストルをパンパン撃ったり、唯一アリなのは石橋凌との日本刀での一騎打ちぐらいかなあ。とにかくジェット・リーを主演に抜擢しておきながらフィジカルなアクションが余りにも少なく、ケイン・コスギとの対決もアッサリだし、デヴォン青木に至っては手下に拳銃を突きつけて「サラダ食べたいの!」とトンチキな台詞を力み返った口調(吹き替え)で口走るくらいでアクションはほとんどナシとは一体どういう了見かと。『シン・シティ』みたいにポン刀振り回してアクションしてくれるかと思っておっちゃん期待しとったのに。「サラダ食べたいの!」て。あんまりだ!


と、話が進むに従ってプンスカ度が沸点に近づいていましたが、最後、全体のプロットが明らかになると、あら、結構燃える話じゃないの。と許せる気分になってしまったのでウッカリ納得してしまい劇場を出ました。しかし一緒に観ていた同居人(ジェット・リー好き)は怒りのあまり「『ザ・ワン』の方が全然マシだったよ!」というたいそう捨て鉢な発言をしておられました。


それにしても、やはり欧米の監督が日本の風俗を自然に描くのってまだまだ難しいんだなあと。石橋凌が出演する現場ではおかしな所は可能な限り直したそうですけれど、彼が出てこないシーンではそれはもう大変ムゴいことになっているので洋画におけるヘンな日本描写フェチの方は必見。こういうのをキチンと是正するコーディネーターって職業として成り立たないんですかね?洋画と日本の間の溝はまだまだ深いようです。完。