カジノロワイヤルの手帖

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三好達治詩集

三好達治詩集 (新潮文庫)
ああ、この人の詩はむかし中学の教科書で読んだ事あるなあ、と思って古書店で購入。教科書にも載ってた有名な「雪」という詩は、


太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ


というたった2行だけの詩で、土俗的な日本の冬の原風景の中にもなにやら思わせぶりと言うか、現代詩っぽいシュールさというか、やったもん勝ちというか、そういう尖った印象だけを中学生当時の自分は受けてたのですが、今読むと結構この詩、こわい。太郎も次郎も、すやすや眠っていると思わせておいて実は土の下にいるのではないだろうか。その土饅頭の上にしんしんとふりつむ雪。なぜ太郎も次郎も土の下に眠らなくてはならなかったのか。それは冬に雪が降る地方の残酷な現実で、この詩はそれを抽象的な詩情の中に隠し持っているのではないだろうか…。という妄想がたいそう逞しくなる一編。この他は旅情あふれる美しい詩が満載なんですが、この詩にだけ異常に死の臭いが立ちこめている気がして他の詩の印象は薄いのであった。いやホント美しい日本語が満載なんですけどね。