カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

魁!!男塾

映画「魁!!男塾」サウンドトラック
いや実写映画化の報を聞いた時にこれほど心配汁を分泌してしまったタイトルもなかった。あのキテレツなアクションをほんとに実写化できるのか。いやそれ以前にそれを演じきれる役者がいるのか。なんつってもあの濃いい顔面とビリー隊長みたいな体躯をもった奴らが標準、という煎じ詰まった世界観の漫画ですよ。それをですな、昨今のほっそりアゴのイケメンたちが演じてしまって「S・A・K・I・G・A・K・E 男塾LOVE」みたいな「腐」の世界になりはすまいか。江田島平八なんて誰が演じるんだ。台湾から李登輝でも呼ぶのか(詳しくはここを参照)。…まあそれからだいたい半年。心配汁も枯れ果てて心持ちは「もう何も言わん。ただありのままを受け止めてこよう」とこれ悟りの心境に至りてこのたび劇場に赴いたわけですね。


感想:

色々言いたい事はある!
しかし、熱い思いはしかと感じた!


いや確かに色々言いたいのですよ。何で三面拳なのに二人しかいないのか。「驚邏大三凶殺」ってコレいっこ減ってないか。虎丸ってこんな華奢な奴じゃないだろ!飛燕、これじゃ「よくも私の美しい顔に…」って台詞言えないだろ!伊達、おまえその甲冑ぬいだらジャージって一体何だ!基本は裸とサラシだろ!赤石先輩、斬岩剣みじか過ぎだろ!「驚邏大三凶殺」の舞台がだいぶ変わっていたのは致し方ないとしても、ラストバトルにおける灼熱のマンガン鋼泉のトラップが全く意味なかったというのはもうどういうわけかと。このあたりはもう原作ファンとしては「お前ら全員油風呂入れ!」と叫ばずにはいられない訳でございます。


しかし!そんなうるさい原作ファンをして納得せしめる熱い思いがこもっているのも事実。まず一部を除いてキャスティングが素晴らしい。富樫(照英)はこれ以上ないくらいのハマりっぷり。ちゃんと油風呂のシーンも入ってて男汁炸裂。中盤の純情さも泣かせます。桃(坂口拓)は最初は声も含めてえぇ…と思うものの観ているうちに桃に見えてくるから侮れない。鬼ヒゲ(菅田俊)も非常に再現度高しですが原作よりも泣かすいい役どころになってました。


注目の江田島平八塾長に麿赤兒。うむ…。たしかに今の日本映画にこの人を演じられるのはこの人しかいないかもしれない。威厳も再現度もかなりのものでした。納得。納得ですが、しかしなんだ、江田島平八という人はもっとこう精力も絶倫で筋肉もテカテカしてる感じであってですな、その、なんだ、こういささか枯れておられるのはちょっと残念。しかしかなり健闘の部類であろうと思われます。ちゃんとあの台詞も出てきますし。あとこの人がラストを締めるあたり、作り手は非常に判ってらっしゃる。


今回絶賛しておきたいのが松尾(与座嘉秋)と田沢(タケタリーノ山口)の爆似度。もう顔を見るだけで笑える。まさか実写で松尾のサザエさん頭を拝める日が来ようとは…。田沢も男塾塾生らしくきちんと身体を造ってあるのが偉い。もともとそういう芸風の人らしいですが。唯一残念なのは松尾の「また何か悪い予感がしてきたのう」が無かった点くらいか。これがあったらパーフェクトだったのに、惜しい。


今回、物語が秀麻呂(尾上寛之)の成長という視点から成り立っているのも構成として良かったです。軟弱だった彼が男塾での経験と友情を糧に成長し、例の「揚がらずの大塾旗」を気合で揚げるシーンは泣かせます。


全体としてはですな、やっぱり細かいところに文句を言いたくもなりますが、やはり作り手の男塾への愛というものが感じられてよかったです。やたら金ばかり掛かってるけど愛を感じない映画化、というのが邦洋問わず溢れるなか、こういう作り手の心意気を感じる映画はちゃんと応援してあげたい。そして男塾ファンはしかとその目でその心意気を確認していただきたい。あと続編ができるとしたらおそらく大豪院邪鬼が出てくるでしょうが、一体誰が演じるのか不安です。とはいえ個人的には、三号生が「押忍!」といいながら丸太みたいなビール瓶をかかえてくるシーンを大真面目にやってくれたらもうそれだけで許せてしまえますが。