カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

あの頃ペニー・レインと

あの頃ペニー・レインと デラックス・ダブルフィーチャーズ [DVD]
監督・脚本:キャメロン・クロウの自伝的作品。もう数年前に録画したまま塩漬けになってたものをようやくチェック。以下結構ネタバレてるので気をつけてお読みください。70年代初頭、15歳という若さでプロのロック批評家になってしまった主人公のウィリアム君(パトリック・フュジット)。憧れのローリング・ストーン誌からの仕事を得て、ロック嫌いのモーレツ母ちゃん(フランシス・マクドーマンド)の反対を丸め込み、"スティル・ウォーターズ"というバンドの密着取材に出かけるのですが、そこには"ペニー・レイン"という名前の少女をはじめ何人ものグルーピーが同行していて…という15歳童貞危機一髪ムービー。もちろん"スティル・ウォーターズ"というバンドは架空のものですが、他に名前が挙がるのはブラック・サバスでありツェッペリンでありデビッド・ボウイであり、やはりあの当時の実体験に近い物語なのだなあというリアリティが臭います。


タイトルにもなっているペニー・レインちゃん(もちろん自称)は、あらゆる男を惑わせるファム・ファタルでありながら自分自身の男運はすこぶる悪い、というみなさん一生に一度くらいはこういう方に出会ったことがあるでしょうキャラで、これをケイト・ハドソンが得難い切実さをもって演じています。「ムキャー!振られたのぅ!」といって睡眠薬飲んで死にかかっている彼女に呼び出されて当惑しつつも彼女が好きでたまらないウィリアム君の「ボクどうしたらいいんだ?ウォォォォ!」という当惑と嬉しさがぶつかりあう葛藤には実に実感がこもってます。そんな純情ウィリアム君ですからアンナ・パキンやファイルーザ・バルクといった一癖も二癖もある女の子からドーテー剥奪の危機に遭ったりもしますが持ち前の純情バリアで危機突破です。


しっかし観ててイライラすることには仕事でバンドに同行してるにもかかわらずバンドの面子がヘラヘラしてたりLSDをキメたりしてインタビューに応じてくれないのでウィリアム君の仕事はいっこも進まず、ウィリアム君も「は、そですか。じゃ明日に」なんてノンキなこと言ってますから原稿はメモのまま全く進みません。編集部からは行く先々に電話が掛かってきて「早く原稿送れ」と脂汗垂れるプレッシャーがかかり観ているこっちがハラハラしますがその間にもウィリアム君はペニー・レインと川岸でしんみり語り合ったりしてるので納期厳守の世界にさらされている36歳既婚サラリーマンとしてはイライラがマキシマムに達します。とっとと原稿かいちまえ!そして童貞も捨てちまえ!と頭のてんこすから黒煙がブスブス昇る気持ちで観ておりますと、いつの間にかゲンコーは仕上がっていて編集部が校閲しているのでいやあオイラもこんな具合で仕事をこなしたいものだとたいそう感動しました。結局この原稿はバンドの内情に余りに肉薄し過ぎていたためにバンド側から公表を差し止められますが、メンバーとはやはり長いツアーを一緒に旅して気心の知り合った仲。ペニー・レインの最後の計らいでバンドのリーダーとウィリアム君は和解して、無事原稿も世に出てバンドもブレイクするのでした。というお話。


バンドのツアー内幕、しかも女と欲がらみのもつれ合う人間模様ということでギスギスしがちな題材ですが、舞台となっている当時が実にテイキットイージーな時代であるせいか陰惨さはミジンコも感じられず、ロックという不健康な世界の話ながらとても甘酸っぱく爽やかな後味となっています。ときに切なくときに可笑しく、キャメロン・クロウが自身の青春を愛情をこめてこの映画に注いだことがよく伝わってきます。特筆したいのはケイト・ハドソンの背伸びした痛々しいファム・ファタルっぷりと、パトリック・フュジットのたった今蒸し上がったようなホカホカの童貞っぷり。これだけでこの映画の甘酸っぱさは約束されたと言ってもいいでしょう。


全編に当時のロックが流れまくるので70年代洋楽がお好きな方には是非おすすめの一本。70年代クロニクル映画としてもとても好ましい映画です。