英国推理小説の古典と称されるこの本、古典だからという理由で読んでみました。作者のA.A.ミルンはクマのプー太郎、じゃなくて、下半身はフリチン状態でありながら赤いシャツだけを着ているというフリーダムなファッションで名高いあのくまのプーさんの作者。というわけで本格推理小説でありながら全編ユーモアに溢れた内容になっていますが、いかんせん訳が古いために「いったいどこの地方の日本語だそれは」という読みづらい文章になっているのがハードル高い。最初の数頁読んでは寝て、また次の数頁読んでは寝て、という繰り返しで挫折しかけましたが、しかしそこを逆に考えて「そういう翻訳独特のぎこちない日本語を味わう」というスタンスに切り替えたら楽しく読めました。
「すぐに思い当たるわかりきった解決は、じつにすらすらしているが、それだけにまたじつにまちがっているものだ」
ううむ。このもどかしい感じ。日本語ネイティブのわれわれには非常にムズムズするのものがあります。
あ、本格推理モノとしては結構面白かったです。ただし、時代が時代(1921年作)だけに、いま現在では成立不可能なトリックなのはご愛嬌。あと、作中の探偵とワトソン役がほのぼのした関係で和みました。世が世ならたちまち腐女子の餌食となってアントニー攻めのビル受けなんて同人誌が出回ってたかも知れません。その際に当たってはぜひこのぎこちない日本語で台詞を組み立てていただきたいものです。