カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

ダークナイト

オリジナル・サウンドトラック ダーク・ナイト
ぬうう、こいつぁ濃いぜ。濃過ぎて一回観ただけじゃディティールを隅々まで追えませんでした。上映時間2時間半の長尺なのにかかわらずもっと長くても良かったのにと思わせるギチギチの内容。そして観てて動悸が高まった映画は久しぶりであります。この動悸の高まり方は『セブン』を観た時に似てるなあ。とにかく悪意とメイクと火器爆弾以外は何もナシ、という純粋悪のジョーカーが強烈で、こいつの所業がことごとく狡猾で迷いが無くそしてドス黒い悪意に満ちており、ヒース・レジャーの怪演もあって映画悪役史の暫定トップ3入りは確実。ジャック・ニコルソンの影が急激に薄くなります。対峙するバットマンはジョーカーに「素顔をさらせ、でないと市民を殺す」「要人を殺す」「とにかく殺す」と容赦ない責めに遭い、挙げ句は守るべき市民から「バットマンをジョーカーに差し出せ!」と言われるわ片思いの相手はイケメン検事に取られるわで気の毒度は前作の比ではありません。それでも己の信念を貫くためイケメン検事と手を組みジョーカーを追いますが、ジョーカーはそんなバットマンをさらに民衆の敵に仕立て上げるべく次々と悪辣な罠を繰り出して来てさすがのバットマン「わしがおるからあかんのかも知らん」と凹み、いっそ素顔をさらそう。もうイケメン検事にゴッサムシティの治安を任せてヒーロー稼業から足を洗おう。とまで考えますがそうはイカの金閣寺でジョーカーはその上を行ってさらにゴッサムを阿鼻叫喚の事態に叩き込むのでやはりバットマンは出動してしまって余計ジョーカーの罠にはまりさらに被害が拡大。市民のバットマンに対する敵意マイルはどんどん溜まってゆくのでした。ひどい。ひどいわー。


苦悩するスーパーヒーローというシチュエーションは初代ウルトラマンのいにしえから繰り返し描かれて来たヒーロー永遠の課題ですが、これほどのギリギリにまで追い込んで描いてるのはちょっと観た事ないです。「オマエみたいなのがイイ気になって出てくるからオレみたいなイカレ野郎が出てくんだよ」「オマエの守っている市民にそれだけの価値があるのか?」「オマエだって法を外れたコトをやってんじゃないかよ」と時に台詞で時に行為で挑発してくるジョーカー。ギリギリまで追いつめられて自分の信念そのものの意義を疑わざるを得ないバットマン。しかしその苦悩の果てにバットマンが選んだ結果とは…という落としどころが非常にシビアで男泣きサンダーが高電圧で炸裂します。


あと、とにかく予習として『ビギンズ』は観といて良かった(テレビだったけど)。これを観たかどうかでバットマン苦悩のコクが格段に違ってくるので出来れば鑑賞にあたっては前作を予習しといていただきたいです。単なる善悪で割り切れない狂気と信念のせめぎ合い。それはコインの裏と表。というところまで踏み込んでしまったというバットマンはもう元に戻れないかもしれないシリーズとどめの一本かも知れません。それくらいへヴィーな映画でしたよ。続編どうすんだろうこれ…。つかヒース・レジャーがもういないじゃん!どうすんだ。