カジノロワイヤルの手帖

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駅 STATION

駅 STATION [DVD]
監督:降旗康男、主演:高倉健脚本:倉本聰健さんは北海道警察の刑事ですが射撃の腕を買われてメキシコオリンピックの選手に抜擢。いきなり健さんは持ち前の不器用さをスパークさせ、オリンピックと言う目標に専念するために妻のいしだあゆみと離婚。その後オリンピックの結果がどうだったのか全く明らかにされないまま数年が経過。健さんは選手を引退して刑事を続けつつ射撃のコーチも兼任しオリンピックを目指す後輩の指導に当たりますが、とある事件の担当中にコーチの座を追われます。なんでも道警の中に狙撃部隊を作るのでついてはその部隊の指揮にあたってほしいとの由。しかし目下次のオリンピックに向けて選手を育成している最中でありトップの判断とは言えいくらなんでもそれは。という状況ですが。ここでも健さんは内心「えーマジかよ」と思いつつも生来の不器用ボムを爆発させ「自分は一介の警察官であります」とあっさり命令を受諾。その後道警の腕利きスナイパーとして汚れ仕事を淡々とこなしてゆきますが、所詮自分は人殺しの道具、と言う思いが拭いきれなくなったころにちょうど年末年始がきて帰省する健さん。そこで寂しげな居酒屋の女将といい仲になり、さらには里の母親が寂しい思いをしていることも知り、この稼業から足を洗って郷里で静かに暮らそうと思ったのですがそこは好事魔多し。健さんの標準装備である不器用地雷が炸裂してそうは問屋が卸してくれない気まずい事態に発展するのでした。というお話。


この気まずさ描写と、そこで寡黙に状況を堪える健さんの不器用スタイルがこの映画のポイントです。連続殺人犯に殺された先輩を看取る健さん。オリンピックのコーチ更迭を熟考の末受け入れる健さん。汚れ仕事を敢えて引き受ける健さん。いい仲になった女の情夫が指名手配犯だったためにうっかり射殺してしまい、その後女のところを訪れるも会話が弾む要素が何一つあるわけでなく延々と味の濃い沈黙に堪える健さん。この気まずいシーンを延々と長廻しで観せてくれるため古今無双のいたたまれなさを観客に強いる試練ムービーとなっています。が、ここに様々な人生の機微が凝縮されているのでやはり飛ばす訳にはいかない。鑑賞の際はぜひ居住まいを正してこの気まずさを味わうくらいのスタンスで挑んでいただきたい。


まあ映画が終始この調子だとさすがに通常暗いと言われる日本映画においても常軌を逸した鬱展開になってしまうため、ときどき息抜きのような和むシーンが入っていてホッとします。特に健さんと女がデートで映画を見に行きますが、その映画がなぜかMr.Boo!』で有名な調理場での格闘シーンが延々引用されているのが特定の映画ファンにアピールするところ大です。


あと、ほぼ全編北海道ロケの映画なので道民としてはあふれるローカル色を堪能できます。札幌、銭函、増毛、留萌、旭川豊平川と展開されるおなじみの地名。特に増毛町はこないだの旅行で立ち寄った町ですが、映画に出て来た風待食堂がほぼそのままの姿で保存されており、増毛駅とともに映画の雰囲気をいまも色濃く残していました。


題名の『駅』とは、実際に劇中も何度となく登場する場所ですが、やはり人生の節目、人が帰る所、帰る人を待つ所、人が去る所、去る人を見送る所、人が人生の岐路に立つ所の象徴として描かれていて、ここに脚本の巧みさを見る事ができます。いい映画でした。