カジノロワイヤルの手帖

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戦場のメリークリスマス

戦場のメリークリスマス [DVD]
監督:大島渚、出演:デビット・ボウイ坂本龍一ビートたけし。「イギリス軍人の眼から見た日本軍人の不思議さ、不可解さと、それに対しての理解を描いた原作」を日本人が映画化した結果、逆に日本人が根底にもつ精神性と欧米に対する憧れが切ないまでに描かれた映画になってしまった、という逆説的に日本人を描いた映画になっています。ただしそれは日本人がこの映画を観たときにもつ感想であって、欧米人がみれば原作の通りの映画に見えるんじゃないかと。


もう観るの三回目くらいで、見返すと昔は気付かなかった事がいろいろ見えてきて面白いです。もう坂本龍一デビッド・ボウイに相対した瞬間から少女マンガのように眼からあこがれビームを発射しているのですが、そこはストイックな日本軍人ですので体裁はビシビシ接しながらも隠しきれないボウイへのドキドキ。(ドキマギしながら)「…早く服を着ろ!」ツンデレか?ツンデレだ!このように時をおいて観ると複雑な心理状態を一言で表現する便利な言葉が出現していることもあるのだなと妙に感心。しかし坂本はこの映画において時代劇でもそこまではという濃厚な目張りを使用しており、それは日本軍人役としてどうなのかという疑念は残りますがまあそういう目元が濃い人ということにしておいておきましょう。あと坂本は日本語の台詞よりも英語の台詞の方が聴き取りやすいという点がなんと言うか残念です。しかし坂本の音楽は素晴らしいの一言。ラストシーンに被るメインテーマはビートたけしの無邪気な笑顔と相まって鮮烈で男泣きサンダー炸裂です。


デビッド・ボウイは骨太の英国軍人でありながら悪魔的に坂本を魅了する役どころということで、完璧なキャスティング得意技のパントマイムを不敵に見せつけて日本兵をイラッとさせたりしますがボウイのファンは必見です。このころのボウイはまだ歯を矯正しておらず、ときどき歯並びがヴァンパイアのように見えることもあるのですがそこがまた悪魔的でよろしい。なんで歯、矯正しちゃったかなあ。こっちの方がいいのに。まあ欧米人は歯が命という価値観も向こうでは強固にありますので仕方がない面もありますが…。あとこの人の瞳(怪我のため左右の瞳の大きさが違う)は悪魔的な眼差しを全方位的にビカービカーと発しており、これに見つめられたら坂本龍一でなくともツンデレもしくはデレデレになるのは必至。


坂本ファン、ボウイファン、あとたけしファンはマストの一本。あと女性が一切出てこない男の映画で男同士の愛情がそこかしこで軍服姿のままスパークしているのでその筋の方々もマストです。敬礼!(ビシ)