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カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

「MW(ムウ)」手塚治虫

本・雑誌

M(ムウ)W(3) (手塚治虫漫画全集)
M(ムウ)W(2) (手塚治虫漫画全集)
M(ムウ)W(1) (手塚治虫漫画全集)
漫画の神様・手塚治虫の夢と希望が満ちあふれていないフォースの暗黒面がスパークする傑作。主人公の結城美知雄は女のように美しく華奢な外見ながら、幼いころ浴びた毒ガス「MW」の影響でモラルや良心が大脳からまったく欠落してしまったという因果者で、しょっぱなから子供を誘拐して殺し身代金をせしめてその親も殺すという迷いのない外道っぷりをご披露。その彼とかつて同じ地獄を体験した神父・賀来は彼を決して法の前には突き出さず、なんとか神父として彼の魂を救おうとしますが、なんと二人は少年の頃から同性愛の関係にあるため賀来は苦悩するのであった。というシチュエーションを軸に、次々と罪を重ねながら政治の世界に食い込んでゆく結城と、それを阻止しようとする賀来の対決を描くピカレスク・ロマンです。


しかしそれにしてもこの漫画のインモラルっぷりは凄まじく、同性愛、少年愛、レイプ(しかも障害者を)、情交中の殺人、獣姦(を匂わせる描写)、不倫、拷問、大量殺人、誘拐殺人、快楽殺人、爆弾テロ、一家心中、脱獄、スキャンダルによる社会的抹殺、帳簿の不正操作、裏金、闇献金、汚職、と三面記事ネタのオンパレード。これだけのネタを織り込みながら次々と犯罪を重ねてゆく結城の真の目的とは?というのが途中で明らかにされますが神父兼愛人の賀来すらも絶句してドン引きするほどの内容で読者も慄然とします。えーこれを多感な高校生の頃(しかも童貞)に読んでしまったオイラが受けたインパクトをおもんばかって頂きたい。当時のオイラ(童貞)にはことのほか同性愛描写が強烈でございました。大トラウマですよ。こないだ買って読み返したらやっぱり凄かったので改めてビックリ。そして猛烈に面白いのを再確認。


しかしこれがなぜか!今になって!実写映画化!なんで?なんでそんな無茶を!と原作を知る誰もが心配の虫をざわ…ざわ…とさせる一報が入ったのが今年の初夏くらいか。すでに公式サイトでは一部映像がみられますが、製作発表の際は「同性愛の設定はナシの方向で」との情報があり、これを聞いたオイラは「なんてことすんだ!謝れ!手塚センセに謝れ!」と心の中で叫んでしまったわけで、例えるならそんなものは肉抜きのスキヤキ、タコ抜きのタコ焼き、イカ抜きのイカ焼き。神父として結城の魂を救おうとする賀来と、愛人として彼の魅力の虜になっている賀来、この二つに引き裂かれた彼の苦悩がこの作品の最大のコクであり旨味であるのに、なんでそれを抜くかな?ん?まあこのように油断させておいて実は腐女子の皆様まっしぐらなBL系の映画になってるかも知れません。結城=玉木宏はともかく、原作ではガチムチ短髪マッチョだった賀来が山田孝之ですから。電車男ですよ。長髪イケメンですよ。どう考えてもBLでしょう。その筋の方々をターゲットにしたのか?という邪推すら。


まあ贅沢は言いませんよ。この漫画を映画化しようというその心意気は買いたい。その結果は劇場に駆けつけてこの目でしかと確認する所存ですが、まかり間違ってムゴいことになっていた場合魔界転生の要領で手塚先生を蘇らせて暴れさすくらいの気合いで観るので作り手の皆様におかれましては是非死にもの狂いで頑張って頂きたいと思った今年の夏。