カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

ノーカントリー

えー最近ケーブルテレビのラインナップにも飽きて来たなー(コレが結構偏ってるのですよ)と感じてたので、同居人と一緒に近所のGEOに突進。オイラは『ノーカントリー』『クローバーフィールド』、同居人は『呪怨 パンデミック』をレンタル。同居人は『SPIRIT』も探してたのですが何故か見つからず(DVDはとっくにリリース済み)断念して帰ってきました。


しかし…ひさしぶりにレンタル屋のラインナップを眺めてみましたが、DVDオンリーになって店のキャパシティに余裕があるのか、話題作は山のように積んでますし旧作もわんさかとあります。しかも一時期のビデオバブル期を凌駕するイキオイのバッタもの映画がピンピン湧いているのには感動しました。『アホリックス・リローデッド』とか。タイトル忘れましたがジャケットが明らかに『クローバーフィールド』のパチもんだったりとか。あと韓流が店の一角のかなりのスペースを占めていたのが印象的でした。香港映画のコーナーなんてこんなチョビっとなのに。チョビっとなのに。お前らそんなにヨン様が好きなのか?まあとりとめが無いので前フリはここまで。


で、帰って早速『ノーカントリー』を観ました。以下感想。


感想1)
この張りつめた空気はただ事ではない。最初から最後まで異様な緊張感が続きます。膀胱が繊細な方はなるべく鑑賞前に用を足しておきましょう。


感想2)
アカデミー賞をとったハビエル・バルデムの殺し屋シガーが余りにもインパクト強すぎて、映画全体を持ってってしまってます。本人にしか理解できない行動原理で次々と人を殺してまわるシガーさん。その髪型が話題を呼びましたが、よく考えると70年代当時ってこういう髪型の人って結構いたよな。『悪魔の沼』のネヴィル・ブランドとか。『オーメン』のデビッド・ワーナーとか。しかしこの映画のシガーさんの髪型が異様なのはそのデカいガタイと濃すぎる顔面にあのおカッパという似合わなさが原因かと思われます。この異様な大男が何を考えているか全く判らない顔面のままティッシュで鼻でもかむかのように人を殺してゆくさまは大きな戦慄を呼びます。


感想3)
このシガーさんの行動原理の判らなさがこの映画の緊張の最大のポイントかと。いつ人を殺すか判らない危険な男と差し向かいで話す。これほど肝を冷やすシチューエーションがあるでしょうか。また会話の内容が不条理きわまりない方向にリードされるので劇中差し向かいで話している方は大変です。ここは一つ最近人気のお笑いコンビのツッコミ担当の方に如何にうまくツッコンで危機回避できるかを試して頂きたいところです。


感想4)
もうこのシガーさんが映画全体を支配しちゃってるので、主演のジョシュ・ブローリンもいささか分が悪い。十分タフガイなのですが。もう一方の主演であるトミー・リー・ジョーンズに至っては保安官なのにほとんど役に立ってません。しかしこのトミー・リー・ジョーンズの半分この世を諦めたような態度もこの映画のポイントです。


感想5)
原題は"No Country For Old Men"とあります。意訳すると「年寄りは追われるのみ」みたいな感じでしょうか?トミー・リー・ジョーンズの老いた保安官の諦観は、もうどれだけ努力してもこの国の暴力は悪化する一方で、しかも年々理解不能なものになって来ている。我々年寄りにはどうすることもできない。という絶望から来ているものと思われます。それを象徴する突き放すようなラストシーン。また、悪化する暴力にはベトナム戦争の後遺症が影を落としていることもこの映画は匂わせています。


感想6)
というような厭世的な所を差し引いても、この映画はサスペンス映画として強烈な出来になっております。必見。アカデミー賞受賞もうなずけます。