カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

007/慰めの報酬

007/慰めの報酬 オリジナル・サウンドトラック
えー二回目観てきました。劇場で同じ映画を二度観るなんざあ実に久しぶりです。初回の時に書き漏らした感想をばポツポツと。以下ネタばれてるのでご注意ください。しばし改行。

















Another Way to Die
今回の主題歌(アリシア・キーズとジャック・ホワイト)は、先行してラジオで聴いたとき「わーパッとせんなあ」とやや不安感が脳裏をよぎったものです。前回の激しいシャウトとアップテンポな曲調で熱血していたクリス・コーネルインパクトが強かっただけに、今回のスローテンポで音数を絞ったアレンジ、起伏のあまりないメロディラインなど、正直どうよなのよコレというのが第一印象。しかしこれ、タイトルバックに合わせて聴くとえらいイイんですよ。iTunes Storeで買ったシングルに比べ、タイトルバック版は適度に尺を縮める編集が入ってて、シングル版にあった間延びした感じが無くなっているのが大きいかと。あと後半のブラスアレンジ「パパパパッ、パパパパッ」と三連符で畳み掛けるところはまさに007サウンドで「判ってるな」とニヤリです。イントロのギターリフもナニゲに前作のイントロを踏襲しててナイスですね。


そのタイトルバックも、『カジノ・ロワイヤル』がカラフルかつラリパッパな感じでド派手だったのに比べ、今回のモチーフは砂漠と夜空と太陽という色味的に地味な取り合わせ。旧シリーズのお約束だった女体も復活しててああーまたそっちに戻っちゃうのかよう、とモヤモヤしましたが、色彩設計が巧みなので地味ながらもカッコいい仕上がりです。夜空の青、影の黒、太陽のオレンジ、砂漠の黄色を組み合わせたデザインはなかなか渋い。これが主題歌とガッチリ組み合って激しく自己主張します。初見時はパッとしない印象でしたが繰り返し観てるとスルメのように味わいが出てきます。映画の内容ともピッタリですし。


やはりアクション映画として素晴らしくタイトにできており、見せ場もてんこ盛りです。脚本は登場人物それぞれの想いを不足無く描き、なおかつ世界的な資源問題(多国籍企業による水道事業の寡占)にも光を当て、最後は新生ジェームズ・ボンドの完成を宣言する、という鉄壁の内容。また俳優の演技もそれぞれによろしく、ダニエル・クレイグは手の付けられない狂犬っぷりと過去を捨てきれない哀しみを併せ持ち、歴代ボンドの中では最高の演技力を発揮。ボンドガールのオリガ・キュリレンコちゃんは終盤の復讐シーンとトラウマ再発のシーンで演技力爆発。007の悪役としてはもっとも弱そうと言われ、あまつさえ「阿部サダヲに似てる」とまで言われて気の毒度スパークマチュー・アマルリックはよく見ると阿部サダヲ同様目が大変怖く、腹黒さ満点で大変よろしい。ラストのボンドとの一騎打ちも「キャァァァア」「キエェェェエ」と叫んで棒を振り回すヘタレな感じが普段は自分の手は汚しません的な悪人の姿っぽくてまたよろしい。前作では何を考えているか判らなかったジャンカルロ・ジャンニーニも今回はベテランの演技力を発揮していいとこ持って行ってます。今回のMの格好良さは前にも触れた通り。お肌クレンジングしながら部下に指令を出す姿が様になるのが凄い。ついでに言うとMの旦那が今回は声だけ出演。次回は顔面が出てくるのか?いやそこ期待する点ではありませんが。


シリアス路線なのでお遊びの要素が全くないかといえば別にそうでもなく、途中で殺されてしまうMI6の職員ことフィールズちゃんは『ゴールドフィンガー』もかくやという全身重油漬けの死体で出てきて古いファンをニヤリとさせますし、うっかり殺してしまったターゲットのことをMに訊かれたボンドが「脈無しでした」とエスプリの効いた台詞で返したり、舞台が変わるたびに凝った書体で国名と地名を表示したりと細かいところも充実。あとマチュー・アマルリックの側近の髪型がもの凄く微妙な不自然さをかもし出しているのは前回うすうす感じていましたが、それがヅラだと判明するカットが0.3秒くらい存在し、ほとんどサブリミナル効果みたいなインサートの仕方だったので側近役の人が身体を張ったギャグも無意識レベルに浸透するだけの結果となっていたのが不憫でした。


ただ気になるのは内容の詰まり方のぎゅんぎゅんさで、ぎゅんぎゅんのあまり必要と思われるカットやもう少し詳しく説明した方が良いと思われるところも省略されており、内容を追うのが結構大変という点がやっぱり惜しいかなと。二時間を切る尺に仕上げたのは、昨今のやたら長くなりがちな映画にちょっと辟易していた身にとっては非常に歓迎したい点ですが、もう3分でもいいから尺を伸ばしてもいいんじゃないかと思った次第。謎の組織"クォンタム"のエンブレムもチラッと出てくるんですが、ほんとにチラッとなので気がつかないんですよね。そのへん、もうちょっと描いても良かったんじゃないかと。


古い007ファンから聞かれる「秘密兵器とか無いしねー」という不満ですが、そういうガジェットはもうありきたりのコンピュータや携帯電話が十分のその役割を果たしておりますし、逆に変に凝ったモノを出せば一気にこのシリアスさが崩れるでしょうから、QもRも出てこないのはやはり正解だと思います。まあ自分も古いファンなので、寂しくないかと言われればまあ寂しいですが、少なくともこの路線には不要でしょう。


カジノ・ロワイヤル』と込みでここまでの傑作を見せられると、どうしても心配してしまうのが続編の内容ですが、ダニエル・クレイグがボンドをやっている限りはこのハード&シリアス路線を堅持して、どうかズッコケないように頑張っていただきたい。これまで舞台がアフリカ、ヨーロッパ、中南米ときたので次はローテーション的にアジアあたりが来るんじゃないか。まさか日本か。そういえば日本を舞台に描かれたイアン・フレミング作ではない007の小説『赤い刺青の男』というのがあって、そこに実名で出てくる登別温泉の第一滝本館や香川県直島町のベネッセハウスが凄いイキオイでロケ誘致をやっていたという話がありましたが、まさかそれにはならんだろうな。うわあなんだかもの凄く心配になってきましたよ。いや別に日本が舞台でもいいんですけど内容が気まずい。札幌時計台からテレビ塔までのカーチェイス」(近っ!)「刺客の河童がオブジェの中に隠れてベネッセハウスに侵入」「河童の放った殺人蚊がサミット会場の要人を襲うがボンドの機転で阻止」(以上Wikipedia「赤い刺青の男」の項より)。もう想像しただけで道に倒れて誰かの名を叫びながら泣きそう。いや今から心配してもしょうがないですが…。頼みます。ホント。