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カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

ブラックホーク・ダウン

ブラックホーク・ダウン [DVD]
監督・製作:リドリー・スコット共同製作:ジェリー・ブラッカイマー戦争映画における「『プライベート・ライアンメソッド」をいち早く導入した、ブラッカイマーの映画屋としてのあざとい嗅覚に警察犬も鼻詰まる思いの一本です。ブラッカイマーの商魂にリドリー・スコットが相乗りし、誰はばかることなく全編これ凄絶な市街戦を描いた未曾有の作品。…なのだと思いますが、商売っ気がチラつく分『プライベート・ライアン』みたいなボディに来る重苦しさは想像したほどありません。しかし実話の映画化であるという点、それも記憶に新しい90年代前半の出来事という点、また酸鼻を極めるソマリアでの内戦がバックにあるという点、これらが映画そのものを否応無しに辛気くさくしています。


最近のアメリカの前線の様子はこんな感じなのでしょうか。「戦闘中は、何のために戦うのか考えてはいけない」(たしかにそれどころじゃないだろう)「最初は何のために戦うのか分からなかった。しかし今は分かる。仲間のためだ」(…この言葉の抱える問題は余りに大きすぎます)など、大局を考える事の許されない最前線の兵士の心情が吐露され、暗澹たる気持ちになります。また、ソマリア側の言い分も余りに重い。「おまえら(国連)の人道主義はここでは通用しない。敵は殺す。それがソマリアの流儀だ」ソマリアちょうこわい。しかし、アフリカにはアフリカの価値観があり、それを欧米が「人道的見地から」「救済する」というのもなんだか腑に落ちない話だ、というソマリア人の言い分は理解できます。良いとか悪いとかのレベルは超えた次元で、それが戦争というものだ、という一面の真実を垣間見せるシーンです。


そもそも「人道主義」が根本に抱える矛盾をこの映画は真っ正面から描いています。一人の負傷者を助けるために二人が犠牲になり、その二人は追いつめられるまで敵を何十人も射殺している。これが矛盾でなくてなんでしょうか。この作戦の司令官は言い切ります。「我々は一人たりとも見捨てない!」しかしその言葉がずんずん状況を悪化させてゆくので観ているこっちはその矛盾が抱える人命デフレスパイラルに慄然とするわけです。


というように、見た目のドンパチの激しさ、戦闘シーンの凄絶さとは裏腹に、観賞後は大食い選手権を観た後のような空しい胃もたれ感に包まれる…かと思ったらそうでもなかった。映画はきちんとお作法に従って、最後に観客が胃もたれを起こさないようガス抜きの胃腸薬を配合しているのでした。このへんの目配せはさすがに商売汁たっぷりのブラッカイマーちゃんですが、この胃腸薬が効くのはアメリカ人だけじゃないか、という気もします。


おまけ。何機もの黒いヘリコプターがゴールド・コーストの美しい景観をバックに飛ぶ映像はゾッとする美しさ。あと、主演がジョシュ・ハートネット、脇にユアン・マクレガーオーランド・ブルームと凛々しい若者ぞろいですが、基本的に髪型は全員クルーカット、あと戦闘中は全身フル装備の上ヘルメット着用なので個体識別が非常に困難で部隊の展開状況を把握するのが一苦労です。そんななか、独特の存在感を発していたのが一匹狼っぽいエリック・バナ。あと顔が独特なウィリアム・フィクトナー。二人ともええ役者やなあ。あとエルフの国の人になる前のオーランド・ブルーム目当てに鑑賞される方もおられると思いますが、出番は期待に反して少ないので要注意です。