カジノロワイヤルの手帖

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ギャグを忘れたガイ・リッチー風味『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』

スモーキン・エース [DVD]
監督:ジョン・カーナハン、出演:ベン・アフレックレイ・リオッタアリシア・キーズ。ハンパに裏世界に食い込んでブイブイいわしてたらFBIの追い込みがかかり、捜査への情報提供を条件に身柄を保護されることになったマジシャンのイズラエル君。彼を飼っていたマフィアの大ボスはそんなことは許さへんで!とばかりに、イズラエル君を抹殺したうえ心臓をえぐって持てこい。成功したら100万ドル!という大懸賞をぶちあげたところ、世界中から腕に覚えのありすぎる暗殺者がわいてきてイズラエル君の立て篭っているホテルに集まってきてドンパチ。ここで彼に死なれては困るFBIも混ざってさらにドンパチ。これを湖畔の超高級ホテルの最上階というタテヨコナナメに動きを作れる舞台で繰り広げると言う殺しのグランド・ホテル映画です。


イズラエル君の身柄を狙って集まってくる暗殺者(?)が濃過ぎる面々で、警察崩れのチンピラ3人、レズビアンっぽい女2人組、何に付けてもやり過ぎるバカ3兄弟、指紋を食いちぎってる正体不明の傭兵、変態っぽい変装の名人、謎のスウェーデン人、そしてイズラエル君に死なれると大弱りのFBI。こいつらが入り乱れてあっちでズバンこっちでドカン、油断してると隣のビルからゴルゴ並みのスナイプ。と大銃撃大会を開催。なぜかチェーンソーや仕込み針まで出てきてホテルは血と煙の海に化すのでした。


と書くと、ガイ・リッチーの快作『ロック&ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(長いよ!)や『スナッチ』といったオフビートなギャグ入りのドンパチ群像劇が思い出されます。いやスピーディーなカット割りや展開、スタイリッシュなタイトルバックなどはかなりソレっぽい。さらに銃撃戦はそれらの上をゆくハードさで、これはもうお好きな方にはたまらない傑作でしょう…かと思ったらそうでもなかったですよ。なんでかと言うと、シチュエーションも語り口もドタバタ風味なのに、映画は後半になって男泣き路線にスライドし、気がついたら最後はなんか立ち位置が違ってました的な、途中からマークシートの塗りつぶすところを一段間違えちゃったみたいな落ち着きのなさが否めません。『スナッチ』の途中からボンクラ風味が抜けちゃいました的な印象ですね。


しかしこれだけの登場人物とややこしい話を二時間を切る尺に圧縮して、テンポ良く畳み掛ける監督の手腕はなかなかのものです。最初の20分で全登場人物と話の前提を一気呵成に描き上げるその切れ味や良し。まあ切れ過ぎて観客の記憶力と把握力がハンパ無く試されるのである意味脳トレです。とにかく顔と名前と役どころと話を掴むのが並大抵の難易度ではありませんが、話については「とにかくイズラエル君が狙われてる」という事だけ押さえてれば大丈夫でしょう。あとは、最初の血が流れてからの先の読めなさをご堪能あれ。なんだかんだ言いながら結構面白く観ましたよ。


アリシア・キーズ何がどうなってこの映画に出たのか全く判りませんが、ゴツいメイクでエロい殺し屋を好演。ベン・アフレックはタイトルロールで一番最初に出る扱いながら、一番最初にホニャララホニャラという不意打ちでストーリーの先の読めなさを身体を張って実現。ほとんど出オチの世界。レイ・リオッタはなんか顔のアバタが薄くなってないか?プロアクティブ使ってるのか?