カジノロワイヤルの手帖

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『薔薇の名前』の低レベルな楽しみ方。

薔薇の名前 特別版 [DVD]
監督:ジャン・ジャック・アノー。主演:ショーン・コネリークリスチャン・スレーター。中世ヨーロッパ某所の修道院。そこにやってきたショーン・コネリーの修道士と弟子のクリスチャン・スレーター。しかしこの修道院では最近僧が謎の怪死を遂げたために不穏な空気が漂いまくっているのでした。このままでは院内に動揺が広がるばかりか、近隣にも悪い噂がピッと飛んで教皇のところからこわーい異端審問官がくるかもしれん。それはちょっといやだ。というわけで君こういうの得意だよね何とかしてくれませんか。と院長から事件の調査を依頼されたショーン・コネリーは、弟子のクリスチャン・スレーターをお伴に魑魅魍魎が跋扈する修道院内の調査を始めますが、調査を始めるはしから今度は明らかな殺人が発生。しかもその死体は聖書の黙示録を彷彿とさせる姿となっており…というお好きな方にはたまらない感じのお話。


ウンベルト・エーコの原作は学生の頃にチャレンジしたことがありますが、なにせ著者が古本屋で発掘した14世紀当時の手記を訳してそのまま載っけてますという設定のために文章が猛烈に難解で、さらに聖書やキリスト教の知識がないと状況把握もままならないというカッ飛んだ内容もあって上巻の半ばまで辿りつけずギブ。俺は一体なぜこの本を買ってしまったのか…。とじっと手を見つめてしまう難易度ウルトラハードのミステリでした。そういや厚さといい大きさといい、友達が飲んで泊まって行ったときの枕にはちょうど良かったかも知れません。


原作そのものは、記号論者である著者がミステリのスタイルを借りて著した神学、哲学、歴史の一大迷宮…みたいな触れ込みで、日本語版が出た当時は国内の読書界の話題を独占していたような記憶があり、まあ当時の自分はそれってちょっとカッコイイ。これを読んでる自分もちょっとカッコイイ?的な中二病的スタンスで挑んだのですがそんな軽薄な若造の歯が立つシロモノではございませんでした。本当に申し訳ございませんでした。


そんなアカデミックな香りがプンプンするミステリですが、話としてはシンプルで、中世の修道院!僧の怪死!連続殺人!超人型探偵と凡人型の助手!見た目がヤバい人たち!男色!異端審問!拷問!迷宮図書館!といった感じでだいたいご想像いただけるかと思います。まああの重厚長大難解な原作を、東洋の片隅のブルーヒップヤングメンにも筋が判るようにしてくれたという点でこの映画は「漫画で読む日本の名作」の如しです。ありがたいことです。


探偵役のショーン・コネリーの役名が「バスカヴィルのウイリアム」、ワトソン役のクリスチャン・スレーターは「アドソ」ということから、この二人がホームズとワトソンのあからさまなパロディであるというのはよく言われる点です。また、黙示録に見立てた殺人、幻の写本、謎の地下通路とその先にある巨大な迷宮図書館など、ミステリ好きする要素が満載ですが、そういった雰囲気がグンバツの舞台に反して本格推理の要素はそれほど盛り込まれてないので要注意です。ショーン・コネリーが謎をスッパスッパと暴いてゆくさまは鮮やかですが、不自然なまでに鮮やかすぎるのでYahoo!知恵袋」でも使とんのと違うかという疑念すら。


ではこの映画は詰まらないのか、というとそんなことは決してない!むしろ面白すぎる!それはつまり、登場する修道僧たちが揃いもそろって強力な顔面とゆかい髪型で観るものの視線をがっちりロックしてしまうからであります。髪型に関しては、これはもう中世の修道僧といえばザビエルハゲのイメージ通りで、21世紀の日本からすればキテレツとしか言い様のない面白カットがそこここに炸裂。シンプルなザビエルタイプの頭頂部剃り「カッパ」に始まり、頭頂部全体をツルツルにして周囲をリング状にしている「土星」、頭頂部の剃りを極限まで広げて周囲の残しを細くし、それをシャープに揃えて垂らしている「大五郎」、周囲の残しが天パでモジャモジャしている「お茶の水」、珍しいところではどうみても明らかなトラ刈りの「ホンマもん」など、今後この髪型が流行るためには一度文明が滅びないといけないレベルのキテレツさです。


顔面の方もこれがまあよくここまでの異貌を集めたなと思わざるを得ない一大キモメンまつりとなっており、どこまでが特殊メイクなのか素顔なのか判断に困る人もいて面白い反面手に汗を握ります。あれですかね?やっぱり中世の修道院ってのはそういう見た目のヤバい方々が「おらこんなツラじゃオナゴにもモテねえしよう、もう寺に行って坊さんになって神に一生を捧げて童貞を守るっすぅ」と集まってくるとこだったんでしょうかね?そう思わないと納得のいかない因業な顔ぞろいで修道院ちょうこわい。そしてそういう強力な顔面に前述のゆかいヘアが乗っており、鬼に金棒。そういった毎日が出オチみたいなルックスの人が隊列を組んで日々のお勤めにハゲんでいるという「ああ、バカ田大学を実写化したらこんな感じなのかなあ」と遠くを見る目で感極まってしまう充実のビジュアル。いやほんと、赤塚不二夫のキャラをリアルに実写化したみたいな人がゴロゴロいるんですからスゲエ。そして知の結晶とも言うべき高尚な文学の映画化をバカ田大学呼ばわりで面白がっている自分の低レベルっぷりはどうなのかと。ともあれイイ顔好きの皆様はマストの一本でございます。おわり。