カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

東北ぐるぐるツアー(顛末):5日目

最後。
青森県むつ市で一泊したら、翌日は雨でした。
ホテル近くのマクドナルドで朝食をとり、その足で恐山に向かいます。むつ市内から山道に入り、20分も走れば恐山です。
途中、冷水という湧き水がでている場所があり、そこの水を一口飲めば十歳、二口飲めば二十歳、三口も飲めば死ぬまで若返るといういわれがある場所ですが、しかし死ぬまで若返るって何だ。若返りの果てに分裂前の細胞まで戻るというのか。何て恐ろしい。まあ細胞にまで戻ってしまうといろいろ不都合があるのでオイラは二口にとどめておきましたが、そこへおもむろに止まったバスから大量にまけ出てきたオバちゃんの軍団は冷水の前に着くや否やペットボトルを取り出して豪快に冷水を汲み倒しておられました。貴様ら全員細胞にまで若返る気か!関係ないですがここ冷水は心霊スポットとしても有名なところで、夜中に通りがかったタクシーが女の幽霊をしばしば目撃しているといいます。そんな噂をモノともせず水を汲み倒すオバちゃんたち。戦って勝てる気がしません。
さて山に分け入ってくるにつれて硫黄の臭いが漂い始めます。ふと視界がひらけると、そこには鈍色の水をたたえたカルデラ湖が。霊場・恐山はこの湖のほとりにあります。
全くの偶然でしたが、この日は丁度恐山の秋の大祭にあたる日で、夏と秋の祭りにしかみられないイタコの口寄せが行われていました。我々は降ろすべき死者の知り合いがいないので遠くから眺めているだけでしたが、雨よけのバラックの下で、イタコの言葉に耳を傾ける人たちの表情が一様に真剣だったのが心に残りました。そう、ここは決して観光地ではなく、青森の人たちにとっては死者に会いに来るための重要な霊所なのです。境内を見れば、火山性の荒れ地のあちこちに小石が積まれ、置かれた石には故人の名前と年齢が書かれ、その傍で風車がくるくると廻り、故人を偲ぶ人たちがあちこちに佇んでいます。「死者のふるさと」という異名は伊達ではありません。地面に置かれた石には、死者と呼ぶには余りにも幼い兄弟の名前と歳が書かれていたりして、思わず心の中で手を合わせたことです。
と、深刻な気分で境内を出たら、結構あけすけな感じで土産物屋や出店が「らっしゃーい」と営業してたりするので和むというか脱力するというか。ちなみに土産物屋で青森限定イタコ仕様キティちゃんがあるのか探しましたがさすがに無かったですよ。
さてすっかり気が済んでしまいましたが、しかしフェリーの時間まであと12時間もあるよ。どうすべえ。まあボケっとしているのもアレなので、むつ市内にあるむつ科学技術館にいってきました。いやあここはオススメですよ!竜巻発生装置とか音波を目で見る装置とか、ぷちぷち触って遊べる科学系インスタレーションが大量にあって全く飽きません。小学生のころの理科ごころがちくちく刺激されます。うっはー!マジすかこれ!と感動してたら係のおねえさんが呼ぶので行ってみると理科の実験の実演会があったりして。実験をするハカセ(画像)とアシスタントのお姉さんの他は我々二人しかギャラリーがいないという思わず半身になってしまうシチュエーションで最初どうなることかと思いましたが、実験が液体窒素を使った極低温実験という燃えるテーマで、カーネーションを一瞬で凍らせたり超伝導の実験をやったり、もう途中から三十路男にあるまじき身の乗り出し方で拍手もせんばかりに目をキラキラさせて見入ってしまいましたよ。ブラボー!ブラボー!子供のころ理科の実験が好きだったお方には超おすすめです。
その後、下北半島を南下。三沢市に向かいます。ここではまず寺山修司記念館を襲撃。力の入った展示に濃厚な70年代の空気が凝縮されています。『田園に死す』をもっかい観たくなりました。
その後、時間を持て余したので三沢航空科学館にも立ち寄り。ここはむつ市科学技術館同様、科学と航空の体感型インスタレーションがたいそう充実しており、三半規管が弱い方は吐瀉必至の体感ぐるぐるマシーンが盛りだくさんで思わず筋肉番付の気分に浸れます。さすが米軍基地の街だけあって航空関係の展示も充実。払い下げられた軍用機の中を見学できる場所もあって軍用機ファンは感激のあまり立ち尽くしたまま心停止です。ちなみに展望台からガラスごしに敷地周辺が見渡せますが、三沢基地が見える方向だけは機密上の理由から曇りガラスになってたりしてマジですねここは。
というわけで、この後は八戸まで南下して、夜行フェリーに北海道まで帰還。翌日は死人のように眠ってしまうくらい濃ゆすぎる、十年に一度あるかないかの旅でした。楽しかった!もう今から「次は九州だな!」と次の計画を考えていますよ。ビバ旅!むっはー!