カジノロワイヤルの手帖

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不都合な真実

不都合な真実
えー話題のこの映画。中身は正直言ってドキュメンタリーではありません。ほとんどはアル・ゴア氏による地球温暖化問題についてのゼミ再録です。その合間に、ゴア氏自身の生い立ち、経歴、そしていかにして氏が地球温暖化という問題に立ち向かうに至ったかと、それがいかに困難だったかの経緯がインサートされる、という感じでこれは一種の啓発映画ですね。


講義は政治家らしく、非常に雄弁で説得力があります。そしてそれを裏付けるデータ、写真の数々。アフリカのキリマンジャロの山頂から年々雪が消えてゆく姿。あるいは南極の氷棚が次々と崩落してゆく姿。いずれも不気味なのですが、やっぱり一番背筋が寒くなるのはそういう光景が自分の身近にもあるということですね。そういえば故郷の四国の山脈も、昔は冬になると真っ白になってたのに、数年前の正月に帰ってみれば山頂がわずかに白くなっている程度でしたし、朝は水たまりに氷が張る事も、水道管が凍結する事もなくなっていました。そこへきて今年の暖冬騒ぎ。実生活でそうした気温の上昇をいくつも体験しているだけに、この映画の訴えかけんとしている事が非常に切実であるということが実感として判ります。


まあそういう内容の映画なので、面白いとか面白くないとか、そういう文脈で語られる映画ではありません。強いて言えばひとコマ分の講義を眠たくならずに観せる、という意味で、この映画は面白いのかもしれませんが、個人的にはですね、地球温暖化の恐怖だけでなく、その「不都合な真実」が、いったい誰にどのような形で「不都合」なのか。なぜその者にとってこの真実は「不都合」なのかを徹底的に追及して糾弾してほしかったですね。これがマイケル・ムーアならもくもくCO2を吐いてる企業のトップに突撃インタビューくらいかましていたと思いますが、そこはやはりゴアさんが政治家であるがゆえの限界なのでしょうか。政治家ですからね。票田に敵はつくれません、ということなのかも知れません。


そらまあ我々だって、日々こまめに暖房を消そうとか、電気を消そうとか、そういう小さな心掛けはしているわけですよ。次に車を買い替えるときはハイブリッド車にしようかとも思いましたよ。でもそのこまーい努力もアメリカの工場のでかい排気で一瞬にして帳消しになるような状況では、やはりしかるべきところに直接「やめい!」と突っ込みの一つも入れて欲しいと。ゴアさんのような有力者であればなおさら、と考えるわけでした。おわり。