カジノロワイヤルの手帖

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ミッドナイトクロス

ミッドナイト・クロス [DVD]
録画物をチェック。監督ブライアン・デ・パルマ。主演ジョン・トラボルタB級映画の音効技師のトラボルタは、新ネタの採取のため真夜中に録音機と集音マイクを抱えて夜の公園を徘徊していたところ、偶然州知事が車で事故死する一部始終を録音してしまいます。そして車に乗っていた女(ナンシー・アレン)を助けるトラボルタ。録音テープの分析から、これは事故ではなく仕組まれた暗殺では?という疑惑が生まれ、真相を追求し始めますが、黒幕は実行犯として殺し屋(ジョン・リスゴー)を野に放っており…というサスペンス。


映画の音効さんが主人公、というサスペンスも例がないですが、その職業的能力を生かして事件の真相に迫る、というプロセスがなかなか面白く、オイラも仕事柄興味深く観ましたよ。このころは音効の現場にパソコンなんてものはなかったですから、音効さんの仕事はもっぱらテープの切り貼りでうえー面度臭そう。今はProToolsがあればカンタンにできてしまう作業だったりしますが、カンタンだけに加工はホイホイなので、こういうサスペンス映画で録音音声が証拠として成り立つのは今だと逆に難しいかもしれません。


デ・パルマ先生の演出は終盤まで手堅い感じですが、お得意の360度パンとか画面分割とかが地味ーに出てくるのでお好きな方にはじらされつつもキタキタ、という感じでしょう。ところが、クライマックスの追跡シーン以降は堰を切ったようにデ・パルマ先生お得意のハデハデな演出が炸裂。空撮にスローモーションにと出し惜しんできたテクニックをここで一気に見せます。最後、トラボルタとナンシー・アレンの周りをカメラが360度回り込みながら、空には満天の花火が咲き乱れ、バックにはピノ・ドナッジオの華麗な音楽がさかんに盛り上がる、というシーンは全てのデ・パルマファンが涙で画面が見えません必至の名場面。ファンの方はチャプター戻して何度でも感涙にむせぶがよろし。


…と、なかなか盛り上がって終わったのですが、実はアンハッピーエンドの映画で、なおかつ最後にトラボルタが自己嫌悪が極まって職務上大それたコトをやらかしてしまうので後味は悪い。というか極悪でした。いいのかコレ。1982年の映画ですが、まだまだ70年代の暗い影を引きずっている感じがあります。


あと、サスペンス映画ではあるんですが途中納得のいかないことが多く、観る人によっては大突っ込み戦争が勃発しかねないので要注意です。そのあたりに動じない広い心の持ち主にはオススメ。