カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

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最初に予告映像をテレビで見た時にはプレステ3のムービーかと思いましたわ。とにかくテクスチャをいじりまくったギラギラの画面とCGに、内容は剣やら槍やらでグッサグッサと殺し合うシーンを何も隠すこと無くモロで描くと言う、お母さん映画もとうとうここまできてしまいましたムービーの決定版。しかし、血しぶきブシューに首チョンパ、ボンボン飛んでゆく手や足や手や足や手、といったグロしの挑戦状のような内容ながら、全体から受ける感じはあまり血なまぐさくありません。むしろ、CG色の濃い画面からはゲームやアニメのような無機的な印象すらうけます。なにせアレだけの斬り合いをやって血しぶきがビシュビシュ飛んでいるのに、返り血を浴びている人が誰一人としていない。なので描写は派手ですが『プライベート・ライアン』みたいに残虐描写で震え上がることは全くありません。


というわけで何となく引き込まれないまま割と冷静に観ておったのですが、それにはもう一つ訳があって、これ、史実に基づいている話ですが、その割には攻めてくるペルシアの軍勢がニンジャみたいだったり肉体的にフリーキーな方であったり、仮面を取れば人類からほど遠い面相だったりともはや完全にクリーチャー扱い。かたや「イイもん」のスパルタ人はどこをとってもギリシャ彫刻みたいな人たちばっかりで非の打ち所の無い肉体美。ペルシアといえば今のイランあたりですが、映画の「ワルもん」とは言えこりゃご当地の皆様はお怒りになられるだろうなあと思ってたらホントに怒ってるそうです。そりゃそうだ。オイラだったら怒る。完全にファンタジーとして割り切って観られればいいですが、でも史実に残っている地名、人物、国家がバンバン出ちゃってるわけで、ファンタジーと思い込むにもちと無理が。


つまるところ実際にあった戦争について、かたや徹底的に美化し、かたや徹底的に醜悪に描いているあたりに、片っぽだけ星で乳首を隠したような居心地の悪さを感じる訳です。戦争行為は単純な善悪の二元論で割り切れるものではとうてい有り得ないのに、この映画はそれを居直ってデフォルメしちゃってる。これはちょっと待ちなさいよと思いました。せめて敵の描写がもちっとマトモな人類ぽかったらですね、超燃えのスペクタクル活劇としてノレたかも知れんのですが。アクションのキレとか非常にカッコいいとは思うんですけど、でもねえ。


あ、最後のエンディング・タイトルはやたらカッコ良かったです。アメコミみたいだなあと思ってたら元はアメコミだそうで。そうか。そうですか。