カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

天使のたまご

TOKUMA Anime Collection『天使のたまご』 [DVD]
監督:押井守略して「天たま」。観る前から噂は聞いていましたが、いやあホント判らなかった。いや何がって全部が。ここまで観る人の解釈を拒否している映画も珍しい。何らかの寓意はあるんだろうな、と解釈を試みても全然歯が立ちません。観る人すべてを狐につままれて豆鉄砲を喰らったハトの顔にする凄い映画でした。何かのたまごを大事に守り続ける少女の前に、どこから来たのか判らない謎の男が現れます。いつしか行動をともにする二人ですが、男はある日突然たまごをたたき割って姿を消し、それを追いかけていった少女は水にはまって死ぬ。という何かの心理テストのような内容。東ヨーロッパ風の荒廃した風景をバックに、都市部を渡る巨大魚の影をモリで射る男たちとか、巨大な螺旋状の階段とか、目玉状の巨大な空中浮遊物とか、非常に幻想的なイメージが挿入されますが「これは何ですか?」「わかりません」と点数は0点です。ここまでいくとこれは逆にアッパレなことではあるまいか。ここまでイメージだけの描写に徹して、難解を通り越し理解不能というところまで物語を語らない。しかも実験映画やアート・フィルムならまだしも、手の掛かるアニメーションでこれをやったというのは…。いい度胸だ。よく企画通ったなあ。


しかし場面場面にクローズアップしてゆくと、天野喜孝のデザインワークもあって非常に幻想的なイメージに溢れているので、意味を追わずに美術品を見るようにして鑑賞する分にはいいかも。また逆に言えば明快な解釈が成り立たない分、観た人なりの解釈がいくらでも可能な映画、とも言えるかもしれません。というわけで『スカイ・クロラ』終わらないうちに観てこよ。