カジノロワイヤルの手帖

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「一日江戸人」杉浦日向子

一日江戸人 (新潮文庫)
江戸漫画家であり江戸研究家でもある著者による、江戸の人々の暮らしを解説したコラム集。「長屋の生活」「浮世風呂」「食」「夏の過ごし方」みたいな町人の暮らしから、「将軍の一日」「ザ・大奥」のようなVIPの暮らしまで、詳細かつ判りやすく書かれた名著。もう一度言う。名著。著者自身の味のあるイラストがふんだんに織り込まれていて、図解付きというのもあって非常に判りやすく、それでいて情報量が多い。しかも面白い。あまつさえ実用的(後述)。とあればもう名著と言うしかないでしょう。


いま岡本綺堂の「半七捕物帳」を読んでいて、やはり著者が明治初期の生まれだけあり江戸情緒が匂い立つように迫ってくるんですが、それだけに現代の読者には判りにくい事が多い。例えば「湯屋の柘榴口をくぐって」なんてくだりがありますが、「柘榴口」とはなんぞや?という疑問もこの本を読んでいれば一発でビジュアルが浮かんできますし、また湯屋全体の雰囲気もよく把握できます。こういう意味で非常に実用的。また「食」の項では当時の酒の肴の作り方がたくさん載っててこれも真似したくなります。というかもう真似して豆腐の味噌漬けを作ってみました。いま冷蔵庫で寝かせ中。この週末の家飲みでは肴として客人にふるまう予定。うまく漬かるといいなあ。