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なんで戦ってたんだっけ『ジョン・ウィック:パラベラム』

ジョン・ウィック:パラベラム [4K UHD+Blu-ray ※日本語無し](輸入版) -John Wick: Chapter 3 - Parabellum 4K-

 

 

監督:チャド・スタエルスキ。主演:キアヌ・リーブス。お待ちかねの第3弾ですね。前作で殺し屋組合の掟を破ってしまい、世界中のその筋の方々から狙われる羽目になったジョン・ウィックさん。1時間後にはどえらい賞金がマイ首にかかってしまう。さあこれからどうなる!というところでの「つづく」だったので続編が大変待ち望まれていたわけです。上映前に前作までのあらすじを超ダイジェストで見せてくれる『ジョン・ウィック:フラッシュバック』という便利動画が流れるので初見の方もまあ安心。

 

 

で本編。そういう前提なので最初から細かい説明抜きでガンガン飛ばしてます。ハナからボリューム全開で行くぜ!というわけでさっそく築かれる死体の山々。作り手もコレでもかと殺し合いのアイディアを詰め込みまくっており、ごつい本で殴ったり雪合戦のようにナイフを投げ合ったりと中身はやんちゃの限りです。ナイフをゆっくり眼窩に刺したりマサカリが頭蓋にめり込んだりとゴアな描写もあったりするので要注意ですね。

 

 

また馬のお尻をぺんぺんすることによって後ろ足を蹴り上げさせ敵を吹っ飛ばす「馬キャノン」、訓練された犬が股間を噛みちぎる「犬バサミ」などのわくわく動物凶器も登場。なお、あれだけ銃が撃ちまくられ刃物も飛び交うなか、馬や犬は傷ひとつ付かない丁重な扱いで、動物の命が人間よりもはるかに重いのがジョン・ウィック界のジャスティスでした。

 

 

撮影の裏話映像。本編映像もけっこう出てきます。

 

 

しかもさすがのジョンさんもこのまま逃げ続けるのはちとキツイ。着替える暇もありません。昔の顔なじみも「いやあんた助けるとこっちもヤバいんだよ」と助けの船を出しませんし、困った。こうなったらちょっと強引だけど昔の貸しを返してもらおう、ということでロシア系の地下組織に助けを求め、そこの因業極まりない女首領(なんとアンジェリカ・ヒューストン!)に「お助け回数券まだ残ってるんで助けてください」「あんた助けたらこっちがヤバいんだよ」「回数券残ってるんです(詰め寄り)」「チッしょうがないね」という感じで船を手配してもらってモロッコに落ちのびます。

 

 

このロシア系地下組織がまた業が深いというか、女子にはバレエ、男子には格闘を叩き込んではジョンさんのような職業殺人家を輩出する殺しのモード学園みたいなことをやっており、どうやらジョンさんもここの卒業生らしい。このへんがなんかスピンオフで別映画になるという話もありますが、それはそれで面白そう。

 

 

いっぽう組織の方は造反者がでたことを素早く察知して「裁定人」なるいけ好かない女をよこし、ホテルのオーナーや地下組織のリーダーに「ああたジョンを裁くんだったら、なぜちょっと逃げる猶予を与えたの?甘いんじゃない?」「ああたジョンに武器渡したでしょ?どういうこと?」と詰め詰めで迫り、あげく「一週間あげるから身辺整理してよね。後釜よぶから」と取り付く島もありません。

 

 

この裁定人、自らの懐刀としてゼロなる殺し屋(マーク・ダカスコス!)を雇うのですが、このひと「にんじゃりばんばん」が流れカウンターで猫が爆睡する場末の寿司屋の店長で、発音の怪しげな日本語と日本語訛りの英語を駆使し、いっそう怪しげな手付きでフグを雑にさばいて客に出したりします。情報量多いな!このシーンのカオスっぷりはシリーズでも随一です。

 

 

歌唱の御本人がおでむかえ

 

 

このマーク・ダカスコスの殺し屋がなかなかよろしい。流石にお顔はお年を召された感じが否めませんが、技はキレキレで、これどう見てもジョンさんより強いだろ感。顔も凛々しいながら目の光が異常者のそれで悪役感バッチリ。ただ時としてあばれる君と荻昌弘先生がフュージョンした姿に見えてしまう瞬間がないこともない。また油断すると発音が無理目の日本語を折々にぶっ込んでくるので、もうちょっとなんとかしてあげられなかったのか、とつい思ってしまう。エンドクレジットみると日本語のトレーナーがついておられたようですが。しかし。

 

 

とまあ話は組織全体を巻き込んだ大抗争劇に発展していくわけです。行く先々で刺客に襲われこれをドスンバタンと排除していくジョンさんですが、アクションシーンの質、量ともにあまりにも過剰になりすぎたせいか「ほえええ」と口アングリで鑑賞しつつも「しかしこれなんで戦ってんだっけ」と我に返る瞬間がなくもありません。いつ果てるともわからない激しい戦いを延々と繰り返すうちに、事の経緯がすっかり頭から蒸発し、なんのためにこんな大殺戮を続けるのかだんだん判らなくなってきます。ロシアンマフィアのバカ息子を相手にしていたころが懐かしい。

 

 

そんなこともあって最後の方はこちらも感覚が麻痺し、目的の曖昧な殺しのフルコースを満腹状態の胃に詰め込まれる感じになってきます。アクション単体はそれはもう迫力満点で、一つ一つは大変痛快なのですが、やっぱりそれをつなげる話が希薄だと燃え度が段違いというか。造り手としてはサービス満点を目指したまごころの制作とはいえ、やはり。

 

 

しかもこれ、完結しないときた。まだ続くのか!次回こそは組織の上層部との全面戦争であのいけ好かない奴らをギタンギタンにしてくれるであろうと期待しますが、しかしモタモタして全5部作とかにしてるとキアヌも還暦をむかえちゃうぞ!急げ!

 

 

余談。音響がすごく良かったですね。アクションシーンの発砲音、打撃音は映画館の音量で聞いてこその迫力なので、これはぜひ劇場で体感していただきたい。終盤にでてくる徹甲弾の音響なんか、それまでの銃器とは段違いの威力を音圧と重低音でバッチリ感じさせてくれます。音効さんナイス!