カジノロワイヤルの手帖

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究極の演技対決『ドレッサー』(1983)

監督:ピーター・イェーツ。主演:アルバート・フィニー、トム・コートネイ。サー(アルバート・フィニー)は舞台劇の名優ですが、寄る年波、気力体力の低下、名声からくる重圧、そしてドイツ軍のロンドン爆撃で心身ともにもうズタボロ。どうみても錯乱状態です。付き人のノーマン(トム・コートネイ)はそんなサーをときに鼓舞し、ときに叱咤し、ときにブランデーをキュッとやりながら、情緒の乱れまくるサーをなだめて舞台に立たせるようありとあらゆる手段で励まします。彼の献身の甲斐あって無事舞台の幕は上がりましたが、肝心のサーのコンディションは最悪。はたして「リア王」の舞台は無事に終わるのか…。

 

 

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アルバート・フィニー(画像上段)はこれでまだ40代ですからね…

 


もともとが舞台劇で、いかにも英国的な辛辣なユーモアと、20世紀中盤のシェークスピア劇の舞台裏への興味、老優と付き人の愛憎入り乱れる火花の散らかしあい、という英国映画のいちばん英国的なところが出た傑作です。一見地味な題材ですがすっごく面白かった。とにかく主演二人がうまく、かたや心身ともに不安定で錯乱状態ながらプライドはバカ高い老優、かたやプロの舞台人としてあらゆる手練手管で老優をコントロールするオネエっぽい付き人、というクセつよつよの二人がぶつかり合う様が圧巻。

 

 

トム・コートネイは、老優の裏も表も知り尽くしていて、付き人として寄り添いながらも事実上彼を操っているあたりや、そんな老優に対して抱いている畏敬の念と軽蔑の念、愛情と憎悪がないまぜになっている様を巧妙に演じています。アルバート・フィニーも、長年の心身の酷使で破綻をきたしつつある精神状態から、付き人にコントロールされて舞台に立ち向かい、物語が進むにつれて精神が高揚し感動的な演技を見せる、というカロリー高い役どころを完璧に演じています。

 

 

 

 

とにかく二人の演技が凄まじく、役者の芝居、それも演劇系の、作り込まれデフォルメされたそれの極地みたいなものを観ることが出来ます。またバックステージものとしても面白く、人手不足のため舞台の裏で出番待ちの役者が音効用の大遠具を操作してヘトヘトになったり、という当時の劇の舞台裏の様子も興味深い。老優が自分の出番がきても重圧のあまり立ち上がれず、観客がざわつき始めるのを脇役がアドリブでつなぐあたりのヒヤヒヤするおかしみも忘れがたい。

 


付き人の異様なまでの献身は、老優への愛と憎しみからだけではなく、舞台に立てない自分が舞台に関わり続けるためのせめても代償行為であるようなのですが、舞台への高い評価という形でそれが報われつつも、当の老優からは一顧だにされていなかった、という皮肉な結末がいかにも英国的ですね。ともあれ上手い役者の濃厚なせめぎ合いという点で稀に見る豊かな映画でした。なんとアカデミー賞で作品賞候補。主演の二人がダブルで主演男優賞候補。これで受賞できなかったの?嘘でしょ?票が割れたんだろうなあ…。