カジノロワイヤルの手帖

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「虚無への供物」中井英夫

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)
戦後の推理小説の最重要作の一本。現在数度目の再読中。読んでて切実に思う事には、やはりきっちりと納得のゆく形で映像化作品が見たい!10年ほど前にBSでドラマ化されていましたが、やはり原作の持つ反ミステリ、反世界の神髄は完全に表現しきれておらず、この耽美な世界を完璧な映像で見たいのう…ああーもったいないのう…、と思いながら見ていたことしきり。深津絵里の久生(主人公)はイメージ通りのキャスティングで良かったですけど。
この推理小説の重要なテーマは、真の意味での犯人が○○であるということですが、これは書かれた昭和30年代よりも、陰惨な事件がはびこり、ネットで大衆の集合的無意識が目に見える形で顕現している現代の社会にこそ通用するものでしょう。ここ数日の無惨な事件の報道を見るにつけ、そんなことをつらつら考えてしまう今日この頃。