カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

地獄の貼り紙部屋(総集編・その1)

今年も押し迫って参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。路上の気まぐれ観察者ことbanでございます。


さて、今年の秋に発見した「路上駐車・路上喫煙お断り」のメッセージを強烈すぎる手製のポスターに込めて週替わりで発信し続ける、その名も「地獄の貼り紙部屋」。今回は2008年を締めくくる総集編として2回にわたりお送り致します。ではまず発見時の衝撃の一枚から。








作品1号。これを通勤途中の道すがら発見したときのインパクトは大変なものがありました。画面から溢れる怨念に初見時はカメラを構えることすらためらわれ、後日おそるおそる周囲に人がいないのを確かめてからシャッターを切りそそくさと立ち去ったのを覚えています。「死んでもイヤ!」死んどるがな!というツッコミも後日心の余裕が生まれてからやっと出て来たくらいにして、実に禍々しいオーラを放つ物件ですが、気になるのが妙な絵の上手さ。とかくこういう貼り紙というものは絵心に不自由している場合が多く、逆にその稚拙さが病的な迫力を生み出しているものですが、この物件に関してはその絵やレタリングの妙な上手さが迫力をいささか抑えていることは否めない。逆にこの内容で絵柄が電波な感じだった場合、オイラは恐ろしさに写真を撮る事すらかなわなかったかも知れません。


とはいえ、この絵柄でも内容は十分不穏当。いやあ世の中はほんま油断ならんのう。と思っておりましたところ。




前作発見からあまり時間が経っていないうちにこの物件が登場。作品2号。うわあ…。だるま女て…。ちょっと公序良俗的にどうなんだ。路上駐車・路上喫煙よりこっちの方がダメなんじゃないか。見苦しいのはお前だよ!と心中にて全力でツッコミをかましてしまいます。しかもやっぱり絵が妙に上手い。左下にクマのぬいぐるみを配して構図上のスキを無くしているあたりも念が入っておる。あと注目していただきたいのが画面右下に立っているデッサン用のパペット。これはよく見ると、



お判りいただけたであろうか(心霊ビデオ風に)。顔が描かれてるんですね。まるで路上駐車喫煙するフトドキモノを監視しているかのようなたたずまい。この人形をこのポスターの脇に配置するという小細工がまた邪悪な感じで恐ろしさを増幅させております。しかし。




作品3号。2号の絵柄があまりに気まずいため近隣住民から抗議でもあったのでしょうか。わずか数日でこのポスターに差し替えられてしまいます。右下のパペットマンもやれやれという感じで休憩のポーズ。しかし3号は3号でこの絵柄。何か大変な目に遭ったと思われる女子学生と「一生うらむから!!」のコピー。傷ついた女子学生をガードするようにフォーメーションを組む指差しハンド。もうこの辺りからポスターの本来の意味である「路上駐車・路上喫煙の弾劾」という目的が、ポスターを張り出す事自体へスライドしてきてるのでは、というニオイがし始めます。


なお、この画像を同居人に見せたところ、「これ、ハルヒじゃない?」とのご指摘。実はハルヒ方面には全然詳しくないオイラで調べると確かに服装や髪型などが酷似しておりますが、ハルヒってなあもっとこうロリロリ萌え萌えしてるもんじゃないのか。こういう漫画エロトピアみたいなタッチはアリなのか。などと実にどうでもいい思いが去来します。そして一週間後。



作品4号。うわっまた更新されてるよ!やっぱりあの女子学生の大変な目に遭った感がご近所の不興を買ったのでしょうか。しかしその代替えにこの絵柄とは一体どうなんだ。馬に尻とは。ビックリマークが人参になってたり、左下に人参カクテルが配されていたりという凝ったディティールや、馬の筋肉や毛並みの描き方など、かなり丁寧に描かれている事が判りますが、しかし人間の尻部分がセクシーからは程遠い垂れっぷりで見た目ほどエロスは感じさせません。ただし馬人間というモチーフにグロテスクな感じは否めず、また近所から抗議が来るのではという心配をしてみたりします。さらに一週間後。



作品5号。この辺りから、毎週一回、月曜更新という作者の制作スパンが明確になってきました。しかもモチーフがあの日曜6時半を牛耳る主婦ですよ。それをこんなリオのカーニバルの人みたいにセクシーにしちゃって。どうすんだ。妙にセクシーにこだわるなあ。あと左下にお魚くわえたドラ猫も描かれております。まことに芸が細かい。あとついにパペットマンが窓際から消えます。理由は判りませんが本来の仕事にもどったのでしょうか?まあそんなこんなで月曜の朝にこの家の窓をチェックするのがオイラの習慣になってしまったのですがそこは好事魔多し。



その翌日にいきなりこういう注意書きが。正直、これを発見したときは目眩がしました。一日たりとも気が抜けねえ!とにかく作者がこのポスターの制作と発表に並々ならぬ意欲を燃やし、うっかり曲解でもされようものならこのようにエスプリの効いた手段で反撃するという実に攻撃的なスタンスで挑んでいることは判りました。判りましたがしかしこれで路上駐車・路上喫煙は改善されているのか?その根本的なところは依然として判りません。



作品6号。完全に月曜の朝の恒例行事として定着した感があります。これは比較的おとなしい方で、タッチはやや松本零士風。一見ファンタジー風味ですが蝶の羽根の模様がさりげなく髑髏だったりしてやはりエログロ・バッドテイストの土俵に足は残っております。



作品7号。「見ているからね…!!」ホントに見ています。しかも新機軸として画材に新しい素材を使用。ひび割れた鏡(っぽいもの)の向こうからこちらを睨みつける男…。ただ、絵のモチーフとしてはこれまでで最もおとなしいと言えましょう。どうしたんだ。いつものあの毒気はドコに行ったんだ。画伯、ガンバ!などと心にもない応援をしておりましたがそこはやはり我らが画伯。やってくれます。



2日後に出現した作品7号パート2。わはは、これは凄い!こういう仕組みになってたのですね!真ん中の顔面を取り替えるだけで新作ポスターに!省エネ!エコ!発明!飽くなき画伯のチャレンジ魂とマメさには軽量な頭も重力で下がる思いです。



さらに2日後にはこのようにオチを付けてくるあたり、画伯の仕事ぶりに手抜かりはありません。今回のエコ仕様が決して手抜きの産物ではないことを証明するこのマメマメしさ。コトここに至ってオイラは画伯ワークをとことんワッチンしてくれようと心に決めたのであります。(その2へ続く)