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カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

クローバーフィールド

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
公開前の徹底した情報遮断と、その真逆である映像リーク。この二つの相反する要素を上手く使い分けて口コミ効果で大ヒットしたこの映画。一体どういうコトになっているのか興味津々でしたが劇場ではうっかりスルー。こたびDVDにてやっと観る事ができましたが、未曾有の映像体験でした。しかしもう出社する時間だ!続きは夜にでもアップします。では。




…という訳で続きです。ネタばれてるのでご注意を。










素人が撮っていたホーム・ビデオの映像をそのまま無編集で使っている、という状況を踏まえた上で観る事になります。『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』。…そんなんもありましたなあ。コンセプトしてはあれにかなり近いものがありますが規模が違う。というわけでほぼ未曾有の映像体験と言って良いと思います。何せ内容が「ニューヨークの街に突然大怪獣が現れて大パニック。米軍と怪獣の大戦闘が行われる中逃げ惑う一般人」という、『ゴジラ』や『ウルトラマン』の数々の都市破壊の中で必ずあったであろう物語を一般市民の視点で撮るというありそうでなかった内容。いやあってもおかしくなかったと思いますがここまでガッチリやるというのは相当思い切らないとないとできない。ある意味アイディア一発のやったもん勝ち映画とも言えますが、やっただけで勝ちになる卓抜なアイディアを緻密な計算と驚きの映像で構成しちゃったために未曾有の映画になりました。スゲー。


冒頭、何気ない日常の一シーンから、夜のパーティに移り、異変が起こるまでの20分間はごく平凡なホーム・ビデオの雰囲気ですが、その短い時間で人間関係の伏線などをきっちり張っているあたり、周到です。また録画に使われたビデオが新品ではなく、過日の平和な風景を撮影したものに上書きしているという設定もいろんなところで臨場感や無常感を盛り上げるのに役立っておりニクいです。


事件が発生してからの映像は、手ブレに揺れに視点ぶん回しという素人そのままのカメラワークを「再現」しつつ、未曾有の都市破壊と巨大怪獣、そしてそれにくっついてきた小型怪獣の恐怖をコレでもかコレでもかと煽ってきます。「素人が撮った映像」ということでテキトーなものを想像しがちですし、また一見そのようにも見えますが、実はものすごく緻密な計算に基づいて絵作りがなされていることが判ります。つかそうでないとCG合成なんてできませんよ。必然的に長廻しが中心の映像になりますが、それでありながら弛みの無い展開と合成の巧みさには恐るべき職人芸を感じさせます。


出ているのが無名の俳優ばかりなのも「本物っぽさ」を醸成するのに役立ってますし、無名の俳優を揃えたことで制作費を思いっきりSFXに使えたせいか特殊効果班も頑張って気色の悪いクリーチャーをお作りになられています。そいつがニューヨークの街を徹底的に破壊して回る臨場感、迫力もまた凄い。


怪物の正体は一体何なのか。また結局この事件の顛末はどうなったのか。その辺りの説明は一切ありません。その不条理さが逃げ惑う登場人物の恐怖をいや増しております。台風だって地震だってテロだって、巻き込まれた当事者のリアルタイムの視点で考えれば不条理以外の何物でも無い訳で、合理的解明よりもまず逃げたい!助かりたい!という必死さが最優先となるのは理の当然。コトの真相は二の次に来るべきであり、そういった分析や解釈を客観的な情報として一切出してこないのが「判ってるな、オマエ!」という感じでナイスです。


というわけでオイラ的には傑作!だった訳ですが果たしてコレ劇場で観た方が良かったのだろうか。もしかしたらゲロゲロのヨレヨレに酔ってしまって「ダメだこりゃ」みたいな事になってかもしれませんが、映像と音響の迫力は圧倒的に劇場の方が上だしなあ…。もしかしたら劇場で観た人とDVDで観た人とで評価が分かれる映画かも知れません。


おまけ。劇中ずっとビデオを廻し続けている非モテ男は逃げる最中も頭上でドンパチやってても襲われて死にかけて、というか死んでもカメラを離しませんでした、というエラいとバカの境界をたゆたうキャラだったのが妙に憎めないヤツでした。ゴッド・ブレス・ユー。