カジノロワイヤルの手帖

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近頃なぜかチャールストン

近頃なぜかチャールストン [DVD]
岡本喜八の戦争に対する怨念というか、嫌悪感というか、そういう「冗談じゃねえよ」的な感情がパンパンに詰まった怪作コメディ。世捨て人の不良老人たちが、突如「ヤマタイ国」を建国し独立を宣言。不発弾の上に建ったアパートを占拠して、立ち退きを迫る家主や警察と戦いを繰り広げるのであった。いやあこの老人たちがなんというか、濃い。小沢栄太郎田中邦衛、今福将雄、殿山泰司(←いるだけで笑える)、堺左千夫岸田森(←怪演)などなど、老け専の日本映画ファンにはたまらないラインナップ。他にも藤木悠財津一郎寺田農、平田明彦といった濃いオッサンどもが集結しており素晴らしい。これに笠智衆志村喬がいればある意味完璧でしたが、出演者はみな岡本監督の心意気に引かれて半分ボランティアみたいな形で出演したらしいですからあまり贅沢も言えませんな。


不良老人どもの独立建国は「ごっこ」みたいなもので一見シャレのようにも見えますが、建国の理由は、経済アニマルと化し、さらに右傾化しつつある日本の現状を憂いて(というか見放して)、というものですから、制作当時よりも今観た方が皮肉がキツい。石原慎太郎に対する批判もちらっと匂わせてるあたり、岡本喜八は25年も前に今の日本の姿を予見してたんでしょうか。とはいえこの映画はそんな日本に対して声高にアジるわけでもなく、むしろ「おまいら、こうなっちゃってるけどいいの?うちらはゴメンだね。サイナラ」という感じで諦観が充満。観終わったあとには不良老人たちに置き去りにされたような寂しさすら残ります。こういう話を戦中派の監督と役者がやっているだけに説得力は強力で、あの世代が持っていた骨太さをゴリゴリ感じます。


…と書くと「ああ、また反戦映画か」みたいなウンザリ感も出てきそうですが、それ以前にテンポのよいコメディとして成り立っているので観ている間はウヒヒと笑えます。劇中、ああタイトルが出てきたな、と思ってしばらく観てるとまた唐突にタイトル(2回目)が出てくるという人を喰った構成にはもう呆れて笑う他は無い。しかしながら観終わったあとにむーんと考え込まされてしまうという、笑いの中にも毒が詰まりまくった怪作。そして傑作。25年早かった!