カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

ミスト

ミスト [DVD]
原作:スティーブン・キング。監督・脚本:フランク・ダラボンおお『ショーシャンクの空に』コンビが再び!しかもキング先生本業のホラーときた!で何だ、アメリカの田舎町を突然襲う謎の霧?その中を徘徊する謎の怪物?いいねえ。というわけで期待しながら鑑賞しました。以下感想。ネタばれてますので注意。














うわあ…(絶句)


何だこの救いレスな結末は。こんなバッドエンドの映画はちょっとないですよ。これ、怪獣映画の皮をかぶった人間への試練映画ですな。霧と怪物に囲まれてスーパーマーケットに篭城する地元住民。外界からの情報が遮断されているので例によって「さてこれからどうすんだ」というところで意見の衝突と見たくないギスギス人間関係が花開きます。そうこうしているうちに人死には出る。怪物は大挙して襲ってくる。また人死にが出る。というわけでどんどん追い込まれてゆく住民たち。そんななか冒頭からヒスをキーキーまき散らしていた宗教バカのオバさんが「これは神が罪深い我々に与えたもうた試練なのよう」と皆の神経を逆撫でする言動を繰り返すので観客のイラり度は急上昇。死から逃れたい一心であろうことかこのオバさんの言う事を信じ始める多くの住民たち。人間やはりここまで追いつめられると理性を失うものなのだなあ、と感無量で見ておりますと、次第にオバさんの言動もエスカレートして「生贄を!」なんてロクでもないことを言い始めるので、これまで割と冷静でいた主人公親子を始めその賛同者は同じ人間からも殺されかける目に遭って危険な霧の中へ逃げ出し、車にたどりついて霧の終わりを探すべく希望の無いドライブへ出かけるのでした。


ここからがいわゆる宣伝文句などに書かれているところの「映画史上かつてない、震撼のラスト15分」にあたります。うーん。ある意味震撼かも知れません。うわーそりゃないぜと思わせる意味において。救いがないというのを通り越して、なんというか、その、アイムソーリー(お気の毒に的な意味で)。この手のハリウッド映画でよくこの結末が許されたなと思わざるを得ない鬱展開。いまツラい目に遭っている人は早まらないでもうちょっとガマンしてればイイことあるかもしれないヨという教訓なのか?とつい浅い解釈をしてしまいます。


結局、最後まで理性を失わないように失わないように、冷静であろうとした主人公も、結局は恐怖と絶望に追いつめられて冷静さを失ってしまったということなのでしょう。よえー。人間ってよえーよなあ…。と見ているこっちは無常感すら感じます。


というような昼間から布団をかぶって寝てしまいたくなる内容を最後まで見せ切るので映画としてはたぶん面白い部類に入るんだと思います。あと怪物の造形がかなりB級っぽいのもこの辛気くさい映画にあって一服の清涼剤、といったら言い過ぎですが、途中人間に寄生した怪物の子供がブワーッと沢ガニの大群みたいに生まれてきたり、人間が胴からまっぷたつに裂かれて内蔵ちゃんが丸見えになってたりとグロ描写は絶好調なのでホラー映画好きとしてはついつい見てしまう訳です。


古くからホラー映画というものにハッピーエンドはほとんど無いもので、バッドエンド、もしくはこの先どうなるか判らない曖昧エンドのものがほとんどですが、その中にあってこの映画の鬱エンドっぷりは容赦がありません。なさ過ぎ。明日は何か楽しい事があるのキャッキャうふふ状態の人はその夜のうちに観ておくと翌日の楽しい事のありがたみが身に染みると思いますのでおススメです。