カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

「神の左手悪魔の右手」(1)〜(4)楳図かずお

神の左手悪魔の右手 (4) (小学館文庫)
神の左手悪魔の右手 (3) (小学館文庫)
神の左手悪魔の右手 (2) (小学館文庫)
神の左手悪魔の右手 (1) (小学館文庫)
恐怖漫画の巨匠が放つ大地獄絵図まつり!というわけで昔立ち読みでビビって「この漫画には近づいたらいかん」と本能で警戒していたのですが、昨日古本浪漫堂にて文庫版が全巻揃っているのを発見。立ち読み時からずいぶん時間が経っていることもありつい油断して大人買い。ちなみに店長は「もう二ページ目からしてダメだもん俺」と率直に述べておられましたが、第一話二ページ目をめくってみると…ギャー!確かにこれはダメだ!やっぱ買うのやめる!…と昔の自分ならビビっていたところですがあれから20年近く経っている自分としては恐怖にも耐性が付き別の意味で大人買いです。


中味はもう酸鼻の一言。考えつく限りのありとあらゆる残虐が容赦なく描かれます。これ、出る時期が時期だったら封印作品と化していたかもしれません。特に第一話の子供の身体を切り刻む描写がヤバ過ぎる。その他、全編にわたってありとあらゆる人体損壊、虐待の場面が描かれ、荒唐無稽なストーリー展開とも相まってスプラッタの域を通り過ぎほとんどギャグ寸前の世界にまで肉薄しています。


物語は、いずれの話も主人公の小学生の男の子が夢の力によって現実の世界の事件を解決する、というパターンを踏襲していますが、読み方によってはこの物語が徹頭徹尾この子の夢である、というようにも読めます。全てを癒す神の左手、全てを破壊する悪魔の右手、というある意味なんでもアリのデウス・エクス・マキナが登場することからも、どうもこの話は夢っぽい。しかしあえて夢とは断言せず、現実とのリンクを紙一重のところで残してあるところが読後に恐ろしさを残します。ただ、夢であったとしても正視できない残虐な描写の数々。無惨絵の世界です。


結末が、雑誌連載時の都合なのか、どうにも中途半端な感じで投げ出されているのが唯一気になりますが、残虐描写の凄まじさでは極北に到達してるかもしれない凄絶な漫画です。これ、子供が読んだら一生モノのトラウマですよ。保管はぜひお子様の手の届かないところに!