カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

もっと観たい!『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』

原作:杉浦日向子。監督:原恵一。声の出演:杏、松重豊。江戸時代の絵師、葛飾北斎は今や世界的に有名な歴史上の人物ですが、その娘のお栄(葛飾応為)もまた非凡な絵師なんだぜ、という史実をもとに、この親子とそれを取り巻く人々、江戸の風俗、そして怪異を描いたのが杉浦日向子の原作。それをお栄と、その妹で盲目のお猶(なお)を中心にすえて一本の映画として再構成したのが本作ですね。もともと杉浦日向子の原作が好きで繰り返し読んでおり、このたび映画化されると聞いて期待と心配半々で待ち構え、公開と同時に飛びついてみたわけでございますね。原作と違って主人公のお栄が美形に変更されていたりとか、オリジナルストーリーがだいぶ入っているとか、いろいろ不安要素もあったわけですが…。

 


映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』新予告編 - YouTube

 

 

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凄くありふれた内容の、全然ありふれてない映画『Keiko』

Keiko 【初DVD化】

 

監督:クロード・ガニオン。主演:若芝順子。ケイコさんは京都で一人暮らしをする23歳の会社員。映画館で痴漢にあったり、高校の恩師を誘惑してとりあえず処女を捨ててみたり、惚れた男とイイ仲になるものの妻子がいると知って別れてみたり、会社の若い男に迫られてもイマイチその気にならなかったりと、どうにも満たされない日々を送っておりました。その隙間を埋めるように会社の先輩と同性愛の経験を経て共同生活を送るようになり、楽しい毎日に気持ちは満たされるのですが、先輩が優しすぎてこのままじゃあたしダメになっちゃう。と親の勧める見合い相手と結婚するのでした。おわり。

 

 

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しげるは関係なかった『愛のメモリー』

愛のメモリー Blu-ray

監督:ブライアン・デ・パルマ。出演:クリフ・ロバートソン、ジュヌビエーブ・ビジョルドジョン・リスゴー。1959年。実業家のクリフ・ロバートソンは愛する妻(ジュヌビエーブ・ビジョルド)と一人娘と幸せに暮らしておりましたが、突然妻と娘が誘拐されてしまいます。警察は犯人を追い詰めるものの、のんきな捜査方針がたたってこれを取り逃がしたうえ、追跡の途中で車が爆発して犯人妻子全員が死ぬのでした。…16年後。残されたクリフさんは罪の意識に苛まれつつも実業家として成功。共同経営者のジョン・リスゴーとイタリアへ営業旅行に出かけます。そこで出会ったのがなんと妻に瓜二つの女性サンドラちゃん(ジュヌビエーブ・ビジョルド)。いまだ過去に囚われているクリフさんは思わずサンドラちゃんをナンパ。アッという間にイイ仲となり周囲の反対を押し切って強引に結婚しようとします。しかし結婚前夜、16年前と同じような手口でまたも花嫁が誘拐されてクリフさんは半狂乱に!さてどうなる?というお話。

 

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風呂敷たたみ成功『X-MEN: フューチャー&パスト』

X-Men:Days of Future Past
監督:ブライアン・シンガー。主演:ヒュー・ジャックマンマイケル・ファスベンダージェニファー・ローレンスジェームズ・マカヴォイ。近未来。そこでは対ミュータント用の究極兵器”センチネル”が猛威を振るい中。人類対ミュータントの戦争は泥沼化して世界は荒廃し、ミュータントはセンチネルの攻撃にさらされて殲滅の危機に瀕していました。そこでミュータント側は一計を案じ、過去の世界にウルヴァリンヒュー・ジャックマン)を送り込んでセンチネル開発を阻止しようとするのです!というお話。



予告編



旧三部作と、そのプリクエルであるリブート版という、異なる時間軸で展開していた2つの流れを、ついに一枚の風呂敷に畳み込んできたという野心作。リブート版の『ファースト・ジェネレーション』がこだわりにあふれた傑作だったので、それとテイストが異なる旧三部作を統合しちゃって大丈夫なのか!と不安が拭えませんでしたが、だいたい大丈夫でした。以下メモ的に感想を。


・『ファースト・ジェネレーション』が凄く良かったのは、60年代クロニクルというテーマを徹底してしたところで、雰囲気、ストーリー、道具立てとその意匠に60年代への愛が溢れており、しかも当時の世界情勢をストーリーに反映していて、見ていて大変説得力があったのですが、今回そういう傾向はちょっと薄め。ウルヴァリンちゃんが送り込まれるのは1973年の世界で、きちんと当時の政治や風俗は描かれているものの、こだわり方という面では前作ほどの濃さはありません。前作の60年代スパイ映画っぽいエンドタイトルとかサイコーだったのですが、今回はそういうのも無し。まあ監督が変わってるので趣味の違いでしょう。ただミュータントがベトナム戦争に送り込まれていっぱい戦死してる、という設定は非常にアメリカ映画っぽいというか、もう70年代のアメリカ回願ときたらベトナム入れとかないと死ぬ、というアメリカ映画の強迫神経症を見る思いです。しかしあれだけ戦闘能力が高いミュータントが戦死するベトナム戦争ってどんなんだ。ベトコンにもミュータントがいたのか。


・そういう不満はありますが、物語の方はちゃんと風呂敷がたためてて、たたみ方も乱れなくビシッとしててノリとアイロンが効いているというか、ちゃんとしています。とはいえタイムトラベルものなので、因果律とか前後の矛盾とか異なる世界線とか、そういうところを考えだすと細かいところが気にならなくもないですが、その辺は考えるな感じるんだ方式でよろしくお願いいたします。


・基本的にキャラ燃えのシリーズなので、どのキャラが好きかで燃え度が変ってきます。今回は前作にひき続きプロフェッサーX、マグニートー、ミスティークの三角関係が軸なのでこのお三方が好きならば大丈夫。ミスティークは全編ほとんど青いままで登場ですが、青メイクでも素顔のジェニファー・ローレンスのイメージが感じられてメイクさん頑張ったな。ウルヴァリンは主人公というよりも狂言回し的な役割で、鉄の爪の出番も少なくて残念ですが、オマエはまあピンでも映画に出とるし今回はこれでよし。その他の皆様はほとんどモブかカメオ出演かぐらいの存在感で、まあ数えると現行のEXILEくらいの人数になってるのでそれもやむなしとは言えますが、その中でもお子様ランチのプリンのような貴重な存在感で頑張るのがクイックシルバーちゃん。超高速で動けるという冗談のような能力をフルに活かし、「ザ・ワールド」みたいな時がほぼ止まった世界での好き放題を存分に見せてくれて大変ゆかいです。出番が前半だけだったのが大変残念。


・エンドロール終了後に続編の存在を匂わすシーンがちょっとだけ入ってるのですが、マーベルの原作を知らない自分は全く何のことか分からず、違う映画のシーンじゃないのかコレ、と思いました。あれ、誰?


・アクションシーンは頑張ってます。ブライアン・シンガーX-MENの一作目の頃に比べるとこういうのが上手くなったなあ…と思いましたが、これはジェイソン・ボーンシリーズ以前か以後かの違い、という気もしますね。