カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

「仮面舞踏会」横溝正史

わりと後期の金田一もの。中断していた雑誌連載を十数年ぶりに加筆して完結させたものとの由。横溝正史って晩年になるに従って筆がくどくなってくるキライがあるんですが、この作品にもぽつぽつそれが現れかけてきております。それはともかく内容は堂々の本格ものですが、読みすすんでゆくと「マッチ棒のパズル」「ゴルフのグリーン」「赤い毛糸」…とキーワードが出るに従ってむくむくと増大してくるデジャ・ヴ。ここここれは…わたくしが幼少のみぎりにうちのオカンが話してくれた推理小説の中身そのものではありませんか!ううーむ、四半世紀の時を超えて炸裂するネタバレ。そういやたしかにこの本はウチのオカンの蔵書にあったよなぁ。オカン…。
それはともかく感想ですが、筆が滑りすぎているところと、筆が足らないところのバランスが悪い感じであります。わりとどうでもいいところが饒舌で、肝心の推理のプロセスが端折られているところがいかにも惜しい。錯綜する謎の骨格や、はしばしに張られた伏線が面白いだけに、そのへんのバランスが取れていればもっと面白かったろうにのう。残念であります。