カジノロワイヤルの手帖

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「煙か土か食い物」舞城王太郎

煙か土か食い物 (講談社文庫)
本を読み漁っていると、時々この人はなんで小説を書こうと思って書いたんだろうと思う事があり、その人がふとした動機とキッカケで己の内面を文字の上にひねり出してしまい、その結果が執筆とか編集とか出版とかその他諸々の面倒くさい過程を経て、うっかり手にした者に夜も眠れなくなるほどの衝撃を与えるということに、なにか天の配剤みたいなものを感じる事があります。神様もなかなかやるのう。なかなか小説を読んでそう感じることはないですが、この小説は久しぶりにキました。猥雑で型破りで粗野だけど、その中に冴え渡る澄み切った視線。殺し合う家族と、埋められる主婦と、最後に訪れる救済。ドライブしたまま冒頭からラストまで一気に突っ走る文章。しかもこれが謎解きのあるミステリーとなっているのが凄い。何が一体どうなってこの作者はこの話を書いてしまったのか。まったく神様は味なことをなさる。文庫の帯の謳い文句「圧倒的文圧」はなかなかうまい事を言うと思った。これからは舞城王太郎に要注目。続編買ってこよ。