カジノロワイヤルの手帖

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魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE

魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE 通常版 [DVD]
監督:山口雄大。主演:須賀貴匡。いやあこの監督さんの『地獄甲子園』は面白かったなあ。バカバカしいシチュエーションのなか、ハイテンションなキャラたちが気合と勢いだけでギャグをかましまくり、たまーに脱力ギャグも繰り出してその緩急の付け方がたいそう良かった。原作の漫☆画太郎のハイテンションな作風と相性が良かったのでしょう。ゲラゲラ笑って観ましたよ。


で、その監督さんが撮ったのが「クロ高」なわけですよ。いや実は期待してたの。原作好きなので。それに『地獄甲子園』の個人的ヒットもあったし、板尾創路が構成担当だし、しかもフレディ役があの渡辺裕之ですよ!こりゃあ期待すなという方が無理でしょう。ですからCSの番組表にこの映画を見つけたときはすぐさま赤鉛筆で丸をつけ、万が一録画に失敗せし場合もフォローできるようにリピートの日時まで入念にチェック。最近にない期待をもって鑑賞に臨んだわけですね。


オープニングはなぜかセピア色の古めかしい記念写真がでてきて「こりゃ同じ『魁』でも男塾のほうでは?」と一瞬冷たい汗が流れましたが、そっちの実写映画版もそれはそれで観たいのでよく考えたら無問題です。実写化されてないですが。そうこうしているうちに本編が始まりました。


…そして終わりました。感想。
「何事も期待し過ぎはいかん」


クロ高といえば、登場人物たちが、ときに教室で、ときに家で、ときに喫茶店で、あからさまに異常な状況(例:生徒にゴリラが混じっているなど)に対して真剣にディスカッションし、その結果まことにトンチキな結論に至るのを池上遼一タッチのシリアスな絵柄で淡々と描く、という所にえも言われぬおかしみが溢れていた訳です。例えて言うなら『レザボア・ドッグス』の冒頭の喋りとか、メンバーの名前決めの場面のおかしさと同質と考えてもよろしい。そのダウナーな原作と、あくまでアッパーをつらぬく脚本及び山口演出の相性の悪さが全ての敗因かと思われます。だって基本的にだらだら日常をすごしている設定の人たちのはずなのに、あろうことか宇宙猿人ゴリ(本物)が攻めてきて、主人公たちは頑張って地球防衛軍を結成し激しいアクションの果てに学校の平穏を勝ち取る、という筋そのものがクロ高のノリじゃないもの。こいつらこんなに熱血だったけか。違います。なので登場人物は同じでも原作ファンとしては常にパンツを後ろ前で履いているような違和感を感じ続けるわけです。期待が大きかっただけに無念でした。終わり。


これで終わるのもアレなのでポリアンナ風に良かった探しを。まずフレディ役の渡辺裕之は非常にいい仕事をしておられました。表情と肉体美だけでここまで怪演できるとは。あと劇中劇「プータン」のくだり。本筋に全く関係なく挿入されるのですが、このエピソードだけは原作のノリを再現していて良かった。あと主演の須賀貴匡は原作にクリソツで良かった。宇宙猿人ゴリの声が本物と同じ小林清志なのは「あの大声優にこんなアホな役を…」とスリリングで良かった。以上です。よろしくお願い致します。