カジノロワイヤルの手帖

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「毒草を食べてみた」植松黎

毒草を食べてみた (文春新書)
以前大型古書店にて100均で叩き売られていたこの本。書名に引かれて買い、興味深く読み、その後なじみの古書店に譲ったのですが、やっぱり手元に欲しくなって買い戻そうとしたら売れちゃってました。ああ、やっぱり自分以外にもこの書名にグッときた方がおられたのだなあ、その人とはお友達になれるかもしれない。そんなことをぼんやり思っていた昨今でしたが、たまたま最近読んだある短編ミステリがこの本を引用しており、ああ、グッときちゃった方がここにも…と思って思わず新品をamazonでポッチリしてしまった訳です。


内容は古今東西の毒草とその効果、主な毒の成分を紹介し、時に著者が実際に試し、あるいは事故の例を挙げ、また歴史的な背景や名前の由来などを教養たっぷりに語る、という魅惑の毒草世界。ドクウツギバイケイソウ、ゲルセミウム・エレガンスといったマイナーなものから、ドクゼリ、トリカブト、マチンといったメジャーどころ、ジギタリスフクジュソウといった一般には薬草と思われているもの、スズラン、スイセンスイートピーといった意外なもの、そしてアサ、ケシ、コカといった麻薬効果のあるものなどなど、44の様々な毒草にまつわるエピソードが興味深く書かれています。いやあ面白い。それら毒草と人間が長い年月の間どのように関わって来たか、という自然人類学の視点からも興味深いものがあります。


ところで…書評などをみると良く書かれているのが「タイトルに反してあんまり毒草食べてないじゃない」という指摘。確かに著者自身が実際に「食べた」と記述しているものは数少ない。しかしドクウツギを食べた時の記述に睡眠薬でラリッた状態に似ている」という一文があることからもしや…と思うのですが、この著者(女性です)は、ここにハッキリ書いていないだけで実は結構ここに出ている植物を試した経験があるんじゃないか。例えばアサとか。ケシとか。コカとか。実際に試したモノはいろいろあるけど、ちょっと体験談をハッキリ書くのは気まずいのでは…という気が。この人の経歴を見てもそれは十分にありそうなことに思えます。となるとこの書は、中島らもの名著「アマニタ・パンセリナ」に比肩し得る隠れドラッグ体験記なのかも知れません。


アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)