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カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

「横溝正史読本」小林信彦・編

横溝正史読本 (角川文庫)
これ、以前は文庫本にものすごいプレミアがついてて、一冊一万円という驚きのこのお値段で取引されてたらしいのですが、先日めでたく復刻。横溝ファンとしてはマストでしょうと早速購入してみました。


中身は、横溝正史小林信彦の対談、横溝のエッセイ、乱歩の「本陣」評、安吾の「蝶々」評、彬光の「獄門島」評、2008年まで改訂された横溝の年譜と、非常に資料的価値が高い内容。特に横溝×小林の対談が尋常じゃない濃さで、横溝の編集者時代から作家としての円熟期、そして対談当時に至るまでの経緯や、自作の創作裏話、同世代の作家との交流、影響を受けた海外の作家の話など、ミステリファンなら読まずにはいられない垂涎の内容ですが、裏話を多分に含んでいるだけあって自作のみならず海外の有名作品や一部国内ミステリのネタを豪快に割っているので、これから横溝にハマろうという横溝ビギナーには決しておススメできないという敷居の高い一冊。読むなら横溝の代表作全部と、戦前〜終戦直後あたりまでの国内ミステリの名作、それからクリスティ、カー、クイーンあたりの代表作は軒並み読んでおく事が必須。もう前置きも何もなくネタバレていますので要注意。もう一度書く。要注意。


可笑しいのは乱歩による「本陣殺人事件」評で、前半はほぼ絶賛なんですが、後半になってくると本人もこの傑作に対して敵愾心が燃えてきたのか次第に小言が多くなってきて個人的な不満がぶちまけられついに最後は説教で終わっており、この傑作を読んで乱歩が作家としての嫉妬を感じたであろう事が伝わってきて面白いです。


安吾の「蝶々殺人事件」の評は、「本陣」なんかつまらない。ミステリとしては「蝶々」の方がダンゼン優れているし面白い。とやっぱり自分の見解でバッサリやっております。どうもこの人はカーとかポーや横溝の怪奇趣味、それにつながる草双紙趣味が嫌いらしい。なので正反対に都会的でスマートでクリスティっぽい「蝶々」のほうが好きっ!というモロ自分の好みじゃねえかソレという評論を堂々と書いててそれがまた微笑ましいのでした。