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カジノロワイヤルの手帖

banのスットコドッコイ映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

ゾンビ伝説

映画

ゾンビ伝説 [DVD]
監督:ウェス・クレイヴン、主演:ビル・プルマンいやあ素晴らしい邦題です。「ダンス天国」もかくやという語呂の良さ。原題「蛇と虹」から2万マイルくらい離れた感性ですが内容としてはこちらの方がズバリ本質を突いており配給会社グッジョブです。あと主演が若い頃のビル・プルマンちゃん。あの『インデペンデンス・デイ』の暴れん坊プレジデントが昔はこんなんにも出てましたという若かりし頃のワーク。まあこの人はフィルモグラフィ観ると、『U.M.A レイク・プラシッド』や『THE JUON/呪怨』、『最終絶叫計画4』とかに出てるので実はこういうのお好きな方かも知れません。


さてお話ですが、やはりゾンビとタイトルに冠しているだけあってウーラウーラと顔色悪いおゾンビ様が集団で「前へならえ」のポーズで襲って来る、かというとそうでもなく、カリブ海はハイチに伝わるという、人間を一度は殺すが半日後に蘇らせてその後は魂の抜けた廃人にしてしまうという世にも物騒な秘伝の薬「ゾンビパウダー」を追って科学者のビル・プルマンはひとヤマ当てようとハイチで調査を開始するものの、政治的に不安定なハイチは治安も不安定であり、警察官僚兼黒魔術師であるオッサンから「これ以上深入りするな」と釘をさされ、ついでに拷問も受けてチンコに釘も刺されと大変な目に遭ってほうほうの体でアメリカに送還されますが、現地で知り合った美人女医の事が心配になってハイチに戻ると、案の定捕まってゾンビパウダーを吹きかけられ小麦粉コントの後のドリフのような姿で仮死状態になって埋葬されますがなんとか脱出、奪われた自分の魂を取り戻すべくかの黒魔術師のオッサンにリベンジを挑むのでした。という内容。


ゾンビ映画と言えば尋常は何かしらの不条理な宇宙線が地球に降り注いで死者がボッコボッコよみがえるとか、頭脳の一部がクルクルパーになった科学者の方がクルクルパーになってない部分の頭脳で死人を蘇らせる薬を開発して隣近所に大迷惑をかけるというのが定番ですが、この映画はハイチに実際に伝わる伝説に取材したノンフィクションをベースにしているというから腰が抜けます。そういえば自分は「ゾンピパウダー」という言葉に妙な聞き覚えがあるのですが、調べてみたら90年代前半にTBSが放送した「これがゾンビだ!」という特番がその記憶の元でした。この番組ではゾンビパウダーを悪用して人間を廃人にし、それを農園か何かの労務者としてタダでコキコキ使っているという現地の劣悪な雇用情勢をスクープしたという、さすがは報道のTBS!と言える要素はみじんも無く、ただただヨイヨイのおっちゃんがトロトロ働いているのを遠くから撮影したり、おっちゃんにインタビューしたら完全にガイキチ状態で血走った目とヨダレが大サービスだったり、子犬に怪しげな液体をぶっかけて腰を抜けさせたりと、今考えれば筋金入りの見世物根性がスパークした番組で、おそらく現在では再放送は不可能。コメンテーターとして出ていたお姉ちゃんが「これはよくないですよ!」と農園に言ってるのか番組に言ってるのか微妙に含みのある発言をしていたのが記憶に残っています。


それはともかく、映画はなかなか面白かったです。「ゾンビとは生きた人間が魂を抜かれたものである」という仮説をもとに、ホラー映画の巨匠であるウェス・クレイヴンのイマジネーションが後半になって冴え渡ります。特にゾンビパウダーは幻覚をもともなう薬品なので、ビル・プルマンがパウダーを浴びてからの幻覚描写や、黒魔術師のオッサン(この人の顔面はホラー映画史に残したい天然ものの怖さ)が掛けた呪いによるじわじわと精神を追いつめる恐怖の描写はウェス・クレイヴンの名作『エルム街の悪夢』を彷彿とさせるものがあり秀逸です。悪夢のようなビジュアルが次々と繰り出され、「ハイチちょうこええ」とガクブルすること請け合いの内容ですが、しかしハイチの方々は自国の文化がこのような扱いをうけておられることをご存知なのか。ちょっと心配です。とはいえ他とは一線を画する異色過ぎるゾンビ映画の佳作。ゾンビファンの方には教養の一環として是非鑑賞をおススメします。