カジノロワイヤルの手帖

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風呂敷たたみ成功『X-MEN: フューチャー&パスト』

X-Men:Days of Future Past
監督:ブライアン・シンガー。主演:ヒュー・ジャックマンマイケル・ファスベンダージェニファー・ローレンスジェームズ・マカヴォイ。近未来。そこでは対ミュータント用の究極兵器”センチネル”が猛威を振るい中。人類対ミュータントの戦争は泥沼化して世界は荒廃し、ミュータントはセンチネルの攻撃にさらされて殲滅の危機に瀕していました。そこでミュータント側は一計を案じ、過去の世界にウルヴァリンヒュー・ジャックマン)を送り込んでセンチネル開発を阻止しようとするのです!というお話。



予告編



旧三部作と、そのプリクエルであるリブート版という、異なる時間軸で展開していた2つの流れを、ついに一枚の風呂敷に畳み込んできたという野心作。リブート版の『ファースト・ジェネレーション』がこだわりにあふれた傑作だったので、それとテイストが異なる旧三部作を統合しちゃって大丈夫なのか!と不安が拭えませんでしたが、だいたい大丈夫でした。以下メモ的に感想を。


・『ファースト・ジェネレーション』が凄く良かったのは、60年代クロニクルというテーマを徹底してしたところで、雰囲気、ストーリー、道具立てとその意匠に60年代への愛が溢れており、しかも当時の世界情勢をストーリーに反映していて、見ていて大変説得力があったのですが、今回そういう傾向はちょっと薄め。ウルヴァリンちゃんが送り込まれるのは1973年の世界で、きちんと当時の政治や風俗は描かれているものの、こだわり方という面では前作ほどの濃さはありません。前作の60年代スパイ映画っぽいエンドタイトルとかサイコーだったのですが、今回はそういうのも無し。まあ監督が変わってるので趣味の違いでしょう。ただミュータントがベトナム戦争に送り込まれていっぱい戦死してる、という設定は非常にアメリカ映画っぽいというか、もう70年代のアメリカ回願ときたらベトナム入れとかないと死ぬ、というアメリカ映画の強迫神経症を見る思いです。しかしあれだけ戦闘能力が高いミュータントが戦死するベトナム戦争ってどんなんだ。ベトコンにもミュータントがいたのか。


・そういう不満はありますが、物語の方はちゃんと風呂敷がたためてて、たたみ方も乱れなくビシッとしててノリとアイロンが効いているというか、ちゃんとしています。とはいえタイムトラベルものなので、因果律とか前後の矛盾とか異なる世界線とか、そういうところを考えだすと細かいところが気にならなくもないですが、その辺は考えるな感じるんだ方式でよろしくお願いいたします。


・基本的にキャラ燃えのシリーズなので、どのキャラが好きかで燃え度が変ってきます。今回は前作にひき続きプロフェッサーX、マグニートー、ミスティークの三角関係が軸なのでこのお三方が好きならば大丈夫。ミスティークは全編ほとんど青いままで登場ですが、青メイクでも素顔のジェニファー・ローレンスのイメージが感じられてメイクさん頑張ったな。ウルヴァリンは主人公というよりも狂言回し的な役割で、鉄の爪の出番も少なくて残念ですが、オマエはまあピンでも映画に出とるし今回はこれでよし。その他の皆様はほとんどモブかカメオ出演かぐらいの存在感で、まあ数えると現行のEXILEくらいの人数になってるのでそれもやむなしとは言えますが、その中でもお子様ランチのプリンのような貴重な存在感で頑張るのがクイックシルバーちゃん。超高速で動けるという冗談のような能力をフルに活かし、「ザ・ワールド」みたいな時がほぼ止まった世界での好き放題を存分に見せてくれて大変ゆかいです。出番が前半だけだったのが大変残念。


・エンドロール終了後に続編の存在を匂わすシーンがちょっとだけ入ってるのですが、マーベルの原作を知らない自分は全く何のことか分からず、違う映画のシーンじゃないのかコレ、と思いました。あれ、誰?


・アクションシーンは頑張ってます。ブライアン・シンガーX-MENの一作目の頃に比べるとこういうのが上手くなったなあ…と思いましたが、これはジェイソン・ボーンシリーズ以前か以後かの違い、という気もしますね。