カジノロワイヤルの手帖

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スラムドッグ$ミリオネア

スラムドッグ$ミリオネア
監督:ダニー・ボイルいやーなんと言ったらいいのか。スラムの兄弟のサバイバル記、大河恋愛ロマン、ムンバイの裏社会モノ、児童搾取、クイズ番組、こういった要素が二時間のなかにパンパンに詰まった超過密ムービー。涙あり笑いあり残酷描写あり歌と踊りあり。正直言ってどこから語っていいか悩みます。一番簡潔にまとめるなら、スラムの子供三人の流転の成長記で、それをクイズ番組を通してなぞり上げてゆくクロニクルかと。このスラムの子供たちの生命力がまたハンパではなく、塵芥にまみれ汚濁にまみれときにウンコにまみれながらもたくましく生きてゆく姿は見ていて可哀想とかそんな湿っぽい感情は全くにじませずひたすらに必死。この子役がいいんですよ。台詞回しが明らかに子供が頑張って演技しましたレベルなのは言葉がわからなくても雰囲気でわかる。のですが、どいつもこいつも目に光があって生きる気満々です。気高く飢えた目をしております。


で、こいつらを組織的に搾取しているヒドい大人たちがいるんですね。おそらく生粋のインド映画であればこの部分は裏社会の暗黒部分、タブーとして描けなかったのではないでしょうか?しかしこの映画の監督はイギリス人ですのでいわば外様。え、タブーだったのコレ。知らんかったわー。はは。みたいなノリで堂々と描いています。明らかに判っててやってるな。その意気や良し。


まあそんな組織に搾取されつつも子供は子供なりに抵抗。やがて成長した彼らは経済的な急成長を遂げるムンバイとともに、それぞれの人生を歩むのであった。それにまつわる悲恋、兄弟の確執、その他いろいろな思いを乗せて映画は爆走してゆきます。この展開のスピード感は特筆ものですが、強引に尺をつめた感じもあって明らかに話の前後がつながってないところがあるのが惜しいかと。観ててアレっと思うところがいくつかありましたしね。しかしこの映画のもつ疾走感と、話の整合性と、どちらかを選べと言われたら断然イキオイのあるほうでしょう。ラストの大団円は唐突に始まるアレのお陰で大盛り上がり。タイトルバックもステキ。面白かった!


あと音楽!音楽がすごくイイ!インドのマサラ風味ポピュラー音楽をベースにしつつも、アレンジはエレクトロニックで、しかもアゲアゲのアッパーな曲ばかり。この音楽のイキオイも映画の疾走感を醸し出すのに貢献しております。作曲を手がけたA.R.ラフマーンは「インドのモーツァルト」の異名を持ち、オイラの大好きな「ムトゥ 踊るマハラジャ」の音楽を手がけた人。このサントラは買いだ!というわけでアマゾンでポチッとやってきたいと思います。