カジノロワイヤルの手帖

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最近観た映画のメモ(2024年1月 その2)

アラビアのロレンス』(1962)監督:デヴィッド・リーン(1/19)

 

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初見。名作オブ名作オブ名作とのことなのでお勉強のために鑑賞。オスマン帝国に支配されたアラブの民を解放すべく戦ったとされる、英国軍中尉のT.E.ロレンスの活躍と苦悩を描く超大作。はしばしに込められてるであろう政治的メッセージはその気になればどこまでも深読みできそうですが、舞台となる1910年代、そして映画制作当時ののアラブ情勢を知らないと理解が難しそう。なのでその辺はのちの宿題にするとして、まず注目したのはロレンスという一筋縄ではいかない人物の栄光と苦悩です。

 

この人は単なる正義漢でも鉄の信念の人ではなく、普通の人と英雄の間を行ったり来たりするような不安定な人物として描かれています。将軍や王様と堂々と渡り合って軍を牽引することもあれば、英雄に祭り上げられて舞い上がり情勢を見誤ることもある。仲間の死や離反で自信を失うも、周囲の期待から強引に作戦を強行して泥沼にはまったりする。人の命を大切に思いながらも、一方で虐殺を避けきれず、自身も戦闘の中でなんだかハイになっちゃったりして相反する感情に自己を引き裂かれてしまう。最終的には英雄となったものの軍とアラブ王侯の両方の思惑から切り捨てられ失意のうちに砂漠を去ることになる。ラストに近づくにつれ、追い込まれていくロレンスの顔から飄々とした笑顔が失われていくのがつらい。ピーター・オトゥールがそのあたりを巧みに演じていて、砂漠の過酷な撮影もあったでしょうに、これでオスカー穫れなかったのはあまりに気の毒。

 

あとはなんつっても撮影が素晴らしく、広大な砂漠の地平線上にフッと塵のような黒点が現れ、それが次第に近づいてきて蜃気楼とともに人影をなす、という描写がそれはもう圧巻のひとこと。他にも朝日に輝く砂漠の遠景、夕日に輝く海辺といった美しい風景が素晴らしく、鑑賞の際は解像度の高いソースとデカい画面を強くおすすめしたい。

 

3時間半を超す長尺で、序曲に始まって休憩を挟むという鑑賞体験を久しぶりにしましたけど、タイパタイパとかまびすしい昨今にあっては大変贅沢で豊かな時間の使い方だなーと思いました。

 

 

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1975)監督:テリー・ジョーンズテリー・ギリアム(1/20)

 

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多分27年ぶりくらい二回目。初見時はあまりピンと来なかった覚えがあります。なんでだろう。泥酔してたからかな。ともかくいきなりこれを観るのではなく、テレビのモンティ・パイソンをある程度見て、メンバーの顔とか個性とかを把握した上でみるとおかしみがぐっと増す感じ。アーサー王と円卓の騎士、聖杯伝説のパロディなので原典を知らんとおかしさが分からないなんてことは全然なく、基本的にそこから材を取っただけであとは皮肉や屁理屈やギャップやビジュアルで笑かすパイソン節が炸裂しているので身構えなくてもOK。そもそもアーサー王自体が向こうじゃ義経伝説みたいなメジャーなお話ですからそもそもがそんな高尚でもなく、お文学やお歴史のお知識がないと門前払いされるもんでもないのです。たぶん。

 

低予算のため同じ役者が何度も出てきたり、さっき出てきた城が名前を変えてしれっと出てきたり、馬を借りる金もないのでお椀をパカパカさせる人がついてくる、といった開き直りのなか、監督のテリー・ジョーンズがガチの歴史学者なので衣装の考証だけは映画史上最も史実にちかい、という狙ってないギャグも発動しています。あまり肩肘張らずに気楽に見てニヤニヤするのが吉。あとは山田康雄とか納谷悟朗とかそうそうたるメンバーが出てる日本語吹き替え版で観たかったなあ。

 

 

ガメラ2 レギオン襲来』(1996)監督:金子修介(1/20)

 

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28年ぶり二回目。これは別途エントリ立てて詳細に書く予定。

 

 

 

カリートの道』(1993)監督:ブライアン・デ・パルマ(1/24)

 

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およそ30年ぶり2回目。初回は就活中に遠征先の道頓堀の劇場で観た思ひ出。ムショ帰りのカリートは裏社会の伝説ガイでしたが、カタギになって生きるぜと人生設計を立てて出所したところ、さっそく昔の仲間が寄ってきてじわじわと泥沼にはまりこんでいくのであった、という話。ここに昔の恋人との焼けぼっくいに火がファイヤー式ロマンスが絡み、メロドラマ版『スカーフェイスみたいになっていきます。

 

デ・パルマはもうノリノリ。手持ちカメラの長回しや抱き合う二人の周りをカメラがぐるぐる回るショットなど得意技を惜しみなく連発。語り口もよどみなく、サスペンスも盛り上がり絶好調。アル・パチーノが凄みと純情の二面性を持った中年の魅力を全方位に発射しつつ、その親友で実は悪徳弁護士のショーン・ペンコカインキメキメの暴走キャラで強烈な印象を残します。ジョン・レグイザモヴィゴ・モーテンセンといった今や名優の方々がチンピラ役で出ているのも味わい深い。そして、儚げなラストシーンの映像とそれにかぶる「ユー・アー・ソー・ビューティフル」のジョー・コッカーの哀切極まりないシャウト!泣かせます。デ・パルマ後半のフィルモグラフィにおいては一、二を争う傑作ではないでしょうか。