カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

最近観た映画のメモ(2024年1月)

オズの魔法使』(1939)監督:ヴィクター・フレミング(1/11)

 

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初見。名作との誉れ高いのでお勉強のために鑑賞。うわぁ…。これはなんというか凄い。なんでしょうこのキャンプな雰囲気は。カラー映画最初期のこってりとした色味、それを強調する極彩色の美術や衣装、異形のキャラクターたち。アナログなれど工夫をこらした特撮。ドラッギーな幻覚スレスレの世界です。特に主人公のドロシーがケシ畑を走り回ったあとおネムになってしまう辺りはかなりキワドイのでは…?というような勘ぐりは2024年の今だから出てくる感想であって、制作当時は直球のファンタジー大作であったはず。にしてもこの毒々しさはどうですか。キャンディーみたいで美味しそうとも言えますが食べたらお腹痛くなるか気持ちよくなるかのどっちかでしょう。

 

原作の小説ともども、アメリカ文化の源流の一つとしてポップカルチャーのあらゆるところに引用されている、というのがこの映画をみるとよく判ります。既視感のあるフレーズ、キャラクターがこれでもかと出てくる。顔がバスクリン色の魔女、ある種のデウスエクスマキナである「正しい魔女」、黄色いレンガ道、靴の踵を三度鳴らす、おうちが一番、などなど。ああ、あれの元ネタはこれだったのか〜と腑に落ちること多し。引用先の作品では、日本人には少々唐突に思えるようなことでも(例えば『ワイルド・アット・ハート』の最後に脈絡なく出てくる魔女とか)、向こうの人からは「ああ、あれねw」とお馴染みだったりするのでしょう。そういった理解の一助、教養として観ておいて損はないと思います。ただしこんにちの目から見て、映画として面白いかどうかはまた別な話。それでもカカシ、ブリキ、ライオンの3無いトリオ(特殊メイクがこの時代にしてはうまく出来てる!)が醸し出すおかしみは今観ても十分面白いですね。

 

 

 

 

トーク・トゥ・ミー』(2022)監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ(1/14)

 

 

現在公開中。SNSで流行している「90秒憑依チャレンジ」に挑戦した女子高校生のミア。本物の死体の手を封入した手のオブジェを依り代に、呼び寄せた霊を体に入らせてその感覚を楽しむというタチの悪い遊びです。その高揚感に病みつきになった彼女は親友の弟にもチャレンジさせたところ、呼び寄せてしまったのは3年前に死んだ自分の母でした。どうすんの。というホラー映画。

 

監督(双子の兄弟だそうです)が元々有名YouTuberだったということで、ついにその界隈から映画監督が出る時代になったのか〜と変な感慨が漏れつつ、映画そのものはガタついたところもなくしっかりした作りで、若者のどうしようもないウェーイ感とその裏にある孤独感をうまくすくい取っています。新しいのが降霊術を酒やドラッグと同じハイになる手段として扱っていることで、さらに憑依されたときの奇行を逐一動画にとってSNSに晒しあげるなど、大人が眉をひそめることを何重にも平気でやっちゃうのが洋の東西を問わず昔から変わらない若者のウェーイ性。そうしたヤングの無軌道を発端にするホラーもまた連綿と作り続けられています。なんででしょうね。

 

そういう無茶に走るのは他者との繋がりが無いと不安な若者の心の表れでもあり、ウェーイしてないときはどの若者もありふれた普通の子だったりするわけで、良し悪しはともかくSNSが浮き彫りにしつつ加速させる同調圧力みたいなものもうっすら見えてきます。今の子もしんどいよね。

 

映画は、降霊後の後処理を失敗したことに端を発し、主人公のたちの身辺に怪異が起こり始めるあたりからホラー味が加速していきます。その陰に誰のものかわからない悪意が見え隠れし、真相がどうなってるのかというミステリ的な興味もあって、話がどこに転ぶかわからない面白さがあります。ちょっと判りづらい部分もあるものの、きれいに決まったオチもよろしい。続編も作るそうですけど、安易に風呂敷を広げないで堅実に誠実にやってほしいなと思いました。