カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

最近観た映画のメモ(2023/10 その3)

ここしばらく時間ができたのでインプットにこれ務めるなど。

 

『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(10/27)

 

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初見。19世紀のアメリカ大陸。男やもめのディカプリオは息子とともに森で毛皮狩りをやってましたが、キャンプを先住民の猛者に襲われて命からがら砦に戻ることに。しかも悪いことに一人になったところをハイイログマに襲われて全身を春先の田んぼみたいにズタズタにされます。果ては仲間の裏切りで息子は殺され自分も森の中に半埋まりで放置されるのでした。ひ、ひどい。しかしディカプリオは復讐の一念で生き延び、屍肉を漁ったり生魚を食いちぎったりしながらサバイバルの旅に突入。とにかく各種の暴力描写がすさまじく、しかも長回しで撮ってるもんですから臨場感がすごい。話題の熊ちゃんに襲われるシーンも全然カット割ってなくて一体これどうやって撮ったんだという驚きを今更ながら感じてしまう。熊が怖い熊が。そんな血みどろの地獄絵図がたいそう壮大で美しい景色のなかで展開し、自然の営みのもとでは人間の存在など余りにも矮小でありながら生に向かって必死にあがくディカプリオの苦難から目が離せません。冷たい川に浸かったり全裸で馬の死体に潜り込んだりとそれはそれは過酷な撮影だったろうと思います。オスカー穫れてよかったですね。力作。

 

 

 

 

『サイコ』(1960)監督:アルフレッド・ヒッチコック(10/29)

 

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30年ぶり3回目かな?勤め先から預かった大金を持ち逃げした女。しかし逐電先のモーテルでシャワーを浴びている最中に突如襲われ惨殺されます。かくて行方不明になった女の妹と恋人はモーテルに何か秘密があるとにらみ詮索を始めますが、管理人である青年とその母親がどうも怪しい…というスリラー。というかホラー。とにかく全編にみなぎる不気味さ、不穏さが素晴らしく、このころ既にカラー映画は一般化してたのですがあえて白黒で撮ることで不穏さがいや増しています。沼のどす黒いぬめりがまた怖い。余りにも有名なシャワーシーンは今日の目から見ると流石に古さを感じますが、しかしここで流れるバーナード・ハーマンの悲鳴のような音楽は今もって最高。これを超えるショックシーンの音楽はちょっと思いつかない。まさに古典。

 

 

 

『裏窓』(1954)監督:アルフレッド・ヒッチコック(10/30)

 

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30年ぶり3回目くらい。事故で足の骨を折って車椅子生活のカメラマン(ジェームズ・スチュワート)。出歩けない退屈しのぎに部屋の窓から隣のアパートの皆様の生活をワッチンする日々です。新婚夫婦、寂しいオールド・ミス、プリプリしたバレリーナなどがいるなか、病気の妻を看病していた男の挙動があやしい。妻の姿が消え、男は夜中に何度もトランクを運び出す。ノコギリや肉切包丁を梱包している。怪しむカメラマンは恋人(グレース・ケリー)と推理に頭をひねり、証拠を掴むべく動けない身で行動を開始するのでした。これまたサスペンスの古典みたいな映画で、カメラが主人公の部屋からほぼ出ていかなかったり、舞台も一貫してアパートの中庭だったりという限定状況を上手く使っています。さすがに昔の映画だけあってテンポがおおらかですし、サイドストーリーとして二人が結婚しないするしないと揉めながらイチャついたりしてますが、そのへんはクラシックな味わいとして賞翫して頂くのがよろしいかと。話としては恋人がついにじれて証拠を掴むべく男の部屋に潜入するあたりから俄然盛り上がり、危険が迫っているのに動けず事態を俯瞰することしかできないというカメラマンのじれったさがサスペンスを産んでいます。グレース・ケリーは美人のサンプルみたいなお顔ですがちょっとアゴとかゴツいかもしれない。一緒に見ていた妻はグレース・ケリーがキレイ過ぎて話が頭に入ってこない」という感想を漏らしていました。

 

 

 

『コンジアム』(2018)監督:チョン・ボムシク(10/31)

 

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初見。CNNによる「世界七代禁断の地(2012)」に選ばれた韓国最凶の心霊スポット「昆池岩(コンジアム)精神病院跡」(注:実在)。ここに一攫千金を企む心霊系YouTuber(またかいな)が突入して生配信を敢行。手持ちカメラ、スマホ、アクションカメラ、360度カメラ、果てはドローンまで駆使したプロまがいの装備で挑みますが、7人のスタッフは次々と怪異に襲われ…という話。昔のホラー映画には「スケベに及んだカップルは必ず殺される」というクリシェがあって、観客の内なる他罰欲、つまり「イイことしやがった奴らめザマミロ」的な暗い感情を無意識に満足させる装置なのですが、これが近年は突撃系YouTuberに置き換わっているんでしょうかね?今作のYouTuberも一見当世風の分別ある若者風味ですが実は裏で…という腹黒設定で、そうでなくても一山当てたい有名になりたいうぇーいウェイウェイといういっこも共感を持てない連中なので、こいつらが廃院内で恐怖にびびりまくる様子は観ていてたいへんザマミロという感情が湧き上がってきてそういう意味では痛快。ストーリー的にはほぼそれだけの内容で、病院でかつて何があったのか、どういう曰くがあるのかは冒頭に少し触れられるのみなので、ぱっと見には怖くてもそれ以上の奥行きがなく、怪異の裏打ちとしての闇が語られないため単なるお化け屋敷以上の恐怖がないのが残念でした。本当に怖がらせるためには闇の奥に何があるかを想像させるよすががあるべきで、そこが漠然としてて物足りないのがこの映画の弱点でしょう。しかしありとあらゆる種類のカメラを動員した録画映像のみで構成されているので臨場感は大変あり、これでもう一歩舞台の成り立ちに踏み込んでいたら傑作になっていたかも知れません。