カジノロワイヤルの手帖

banの映画感想&小説漫画音楽路上日常雑感。

「パラドックス学園」鯨統一郎

パラドックス学園  開かれた密室 (カッパ・ノベルス)
どうやらパラレルワールドに迷いこんでしまったらしい主人公は、パラレル学園のパラドックス部、略して「パラパラ部」に入部。そこの部長はポーで先輩はドイルとルブランとクリスティで、同輩にカーもいるのに、この世界には推理小説というジャンルの書物が無い!代わりに現実の方で密室殺人だの雪の山荘だのと言ったミステリめいた事件が頻発している、というありとあらゆる要素が逆説で出来てます小説。なぜか本のすみっこにパラパラ漫画もついてるよ!章題も「密室が生じると人が殺される」「最も怪しい人物は犯人ではない」「アリバイのあるものが犯人である」「名探偵は事件を防げない」と逆説というよりは推理小説のパロディで、劇中の推理もこの前提に従って進められてゆくので結局犯人はこの中にはいない、という屁理屈がスパークした結論に達します。読んでいるこっちは「なめんなよ!プー!」という感じですが、やはり犯人がいない殺人事件というのはあり得ない訳で意外と言えば意外な犯人が指摘されるのですが…。そこでこの本を窓から放り投げるか「こやつめハハハ」と笑いながら本棚の奥深くに埋めるかで読者の何かが試されます。いやミステリというのはこういう世界まで来てしまったのか。これが噂のバカミスなのか。末期的なことよのう。と思いつつこの本はミステリ界における永遠の課題とも言える「○○が犯人」に果敢に挑戦しているので、その点のみは「よくやった」と言いたいですがその口調は泣きながら甲子園の砂を持ち帰る高校球児にかける言葉のごとしです。


以下思いっきりネタをばらすので一旦たたみます。要注意!









えー、この小説の犯人は誰あろう「読者」で、この本についているパラパラ漫画をパラパラして遊んだために小説内世界でたまたまその時密室に入っていた者がページで頭を打って死ぬ、というあまりにも未曾有過ぎる真相ですが、おいらこの本のパラパラ漫画は読み終わったあとゆっくりやろうと思ってたので読んでる最中は全然パラパラしてませんでした。ああ〜、意味ねえ〜。